ふっと思った。端麗な酒は軽く、水のように流れる。それは水に希釈されたようなものだろうか。ただ流れるだけのために、あるのだろうか。だけど、流れた後の匂いや、淡い感触がもたらす大袈裟でない愉悦は、日本酒とともに過ごす時間にある。
このアルバムもそうだ。棘のような音、あるいは奇妙な味、をすべて廃したような、とても端麗な音。音を抜き、疎にすればするほど、音の間に愉悦を生む。ただそこに音が流れるだけ、なのだけど、その音が消え去った後、沈黙がより深い闇のように感じられる、仄かな明かりを点してくれる小品。それでいて、菊地雅章の音であることは強固に主張している。
- アーティスト: 菊地雅章,JACQUES ANDRE MARIE PREVERT,BERNARD D HANIGHEN,MASABUMI KIKUCHI,OSCAR HAMMERSTEIN II
- 出版社/メーカー: メディアリング
- 発売日: 1997/11/24
- メディア: CD
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菊地雅章: M(1997, Media Rings)
1. Drizzling rain
2. Autumn leaves
3. Round midnight
4. Oleo
5. M
6. It might as well be spring
菊地雅章(p)
1997年6月録音