K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

( ECM2527) Craig Taborn: Daylight Ghosts (2016) その断面に顔を覗かせる埋蔵物

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 幾つかのアルバムを聴くなかで、クレイグ・ティボーンの音響的な面白さ、美しさ、味わい深さを感じ、徐々に深みに入っているような感覚がある。決定的だったのは、ECMからのAvenging Angelで、現代音楽が抱える「ある種の空気感」のようなものを、ジャズにre-writeしたような感じが、とても良かった。

  このアルバムはその延長線上で、抑制的なクリス・スピードの管(特にクラリネット)が、メシアンのカルテットの曲のような味を狂言回しのように漂わせる。そこに流し込むピアノの音は、そのような空間的な味付けの上に、沸点が低い、しかし十分ジャズ的な愉悦、かなりゆっくりとした身体の揺らぎ、のような音を繰り出していく。音の温度は十分低いのだけど、聴き手の温度がいつの間にか上昇していく、そして投げ出される。日向に幽霊をみるような淡い体験。

 このような音空間の建築家としてのティボーンもまた、音響的に様々な色彩・光彩を放つ彼のピアノと同じくらい素晴らしい。そのドキュメンタリーを、ニューヨークのアヴァター・スタディオで、フェイバーが収録する。完璧なプロットが見えてくる。今のECM、ときとして退屈な、の最高の部分が切り出されていて、その断面に顔を覗かせる埋蔵物を化石探しのように愉しむ。悪かろう訳がない。そして、ティボーンに掴まれてしまった。

追記:このアルバムは海外のサイトで販売している96 kHz, 24 bitの音源。だから良いのか、それはよく分からないが。

Daylight Ghosts

Daylight Ghosts

 

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( ECM2527) Craig Taborn: Daylight Ghosts (2016)
1. The Shining One (Craig Taborn) 3:34
2. Abandoned Reminder (Craig Taborn) 7:46
3. Daylight Ghosts (Craig Taborn) 7:36
4. New Glory (Craig Taborn) 3:14
5. The Great Silence (Craig Taborn) 5:37
6. Ancient (Craig Taborn) 8:15
7. Jamaican Farewell (Roscoe Mitchell) 5:39
8. Subtle Living Equations (Craig Taborn) 4:31
9. Phantom Ratio (Craig Taborn) 8:29
Craig Taborn(p, electronics), Chris Speed(ts, cl), Chris Lightcap(b), Dave King(ds, perc),
Design: Sascha Kleis
Cover Photo: Thomas Wunsch
Liner Photos: Bart Babinski
Engineer: James A. Farber
Engineer [Assistant] : Tim Marchiafava
Producer : Manfred Eicher
Recorded May 2016
Avatar Studios, New York