K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Bill Evans: The Solo Sessions Vol. 1 (1963) 軽い退廃的な空気、の美味しさ

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 レコードのことが気になると、勢い古いオリジナル盤に眼がいく。実際、薄皮が剥がれたような音を目の当たりにして、何を聴いていたのだろうか、と思うことも多い。とりわけ楽器の放つ音響的な側面に意識が行けば、尚更である。

 問題なのは、そのような意識に囚われた瞬間、そこから楽しみが失せていくこと。偏狭な蒐集癖だけが意識に残ってしまう。それもなあ、と、また思う。音楽を聴く楽しみを狭めるようにも思う。

 最近は幸いなことに、旧譜、新譜、CD、レコードとふわっと分散して聴いていて、それがまた良い。適度に意識が分散している。古い録音も良い日本盤でも良いかな、と思えている。オリジナルあるいはオリジナルに近い盤に固執して、聴くことができない損失が気になるようになってきた。だから、ブルーノートなんかも、質の良い日本盤でいいかな、と思い直している。旧東芝盤、キング盤、新東芝盤、いずれも水準は超えているのではないか。

 このアルバムはThe complete Riverside RecordingsというハコモノLP18枚組で紹介された後、単独の販売となった様子。昨日のアルバムと同様の、穏やかで丸い音。 

 当時のRiversideの音と比べると角が落ちたような印象があって、エヴァンスのピアノのタッチの強さ、は伝わらない。しかし、彼のピアノの美しさは十分伝わる。夜、静かに聴きたいようなアルバム。ジャズ的な昂奮はなく、内省的な演奏なので当時は発売されなかったのか、と思う。まだ時代よりも早かった、のだろう。遅い演奏のなかの軽い退廃的な空気、は格別な美味しさがある。

追記:このアルバムの続き、vol.2はCDのみ。ボックスを入手しないとレコードでは聴けない模様。悩ましいことである。

Solo Sessions 1

Solo Sessions 1

 

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Bill Evans: The Solo Sessions Vol. 1 (1963, Milestone)
A1. What Kind Of Fool Am I? 6:13
A2. Medley: My Favorite Things, Easy To Love & Baubles, Bangles, And Beads 12:27
A3. When I Fall In Love 3:01
B1. Medley: "Spartacus" Love Theme & Nardis 8:37
B2. Everything Happens To Me 5:41
B3. April In Paris 5:51
Bill Evans (p)
Engineer [Recording Engineer] : Bill Schwartau
Mastered by George Horn
Producer – Orrin Keepnews
Recorded at Sound Makers Studio (New York City) at January 10, 1963.