もう少しヒルを聴く。買ったままで、聴いていなかった、あるいは聴くための脳内回廊ができていなかったので印象が薄かった、のだ。
同封されたライナー・ノートによると、ヒルのソロ・ピアノ第一作目。キース・ジャレットのソロが喧伝されている時期でのソロ。日本からの企画に、どのように感じたのだろうか。
聴いてみると、そんなことは関係なくヒルの音が続く。停滞しているようで、逆行する、そして回り込む、そのような迷路のようなピアノ。屈曲点での音響の変化、が思わぬ速度感を繰り出すこともあるが、全体的にゆっくり。ピアノの音響が舐め尽くされる。
モンクのソロでのタイム感はないが、緩急の揺らぎと音響の深さが与える印象は、また違った種類の愉悦をもたらす。一曲だけエリントン、あとはヒルのオリジナル。ブルー・ノートでの録音では窺い知ることができない彼のピアノの音響的な素晴らしさを捉えた一枚。
追記:このアルバムは1975年の5月と7月の録音。この録音の間、7月のはじめにモントルー・ジャズ・フェスティバルでソロのライヴ録音を行っている(Freedom)。そちらもエリントン1曲、あとは自作。曲目は重複していない。聴くのが楽しみ。
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Andrew Hill: Hommage (1975, East Wind)
A1. East 9th Street(Andrew Hill) 3:23
A2. Naked Spirit(Andrew Hill) 6:18
A3. Insanity Riff(Andrew Hill) 3:31
A4. Sophisticated Lady (Duke Ellington, Irving Mills, Mitchell Parish) 5:20
B1. Clayton Gone(Andrew Hill) 6:34
B2. Vision(Andrew Hill) 3:52
B3. Rambling(Andrew Hill) 8:36
Andrew Hill(p)
Engineer: David Baker
Directed By [Promotion] : Yukio Morisaki
Executive-Producer: Toshinari Koinuma
Producer: Kiyoshi Itoh, Yasohachi Itoh
Recorded on May 19, 20 & July 31, 1975 at Vanguard Studio, NYC.