K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Lennie Tristano: Lennie Tristano (1955) 不穏な音の海に潜っていくような

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 高名でありながら、あまり聴いた、という話を聞かない奏者じゃなかろうか。そのような「不平衡係数」が高いのは何故だろうか。寡作であったこと、も一因なのだろうか。あのジャズレコード販売が華やかなりし頃の日本で、隠棲していたトリスターノの音盤を出し、話題になったのも遠い昔だ。

 で、昔から気になっていたので、盤を入手した。2つのセッションからなっていて、ソロとトリオの最初の4曲、コニッツが加わった後半のライヴ。ボクには圧倒的に最初のセッションが面白かった。パウエルでもモンクでもない、またエヴァンスの祖のようでもない、少し変な味が美味しい。モンク的な粗密が面白いのだけど、打鍵とその後の残響のようなものが全く違う。モンクの場合、打鍵とその後の響きに最大限の焦点が当たっている、感覚が聴き手にもあるのだけど、トリスターノを聴いてもそのようには感じない。むしろ、打鍵の後、焦点がぼやけていって、不穏な音の海に潜っていくような感じ、といおうか。

 後半は実質的にコニッツがリーダのセッション。ライヴのためか、端正なコニッツの甘い音が悪くはないのだけど、コニッツに求めるのはコレか?、という感じ。トリスターノもサポートに徹している。ソロでは個性が出るのだけど、控え目。

 レコード全体でのトリスターノ像が何だかボヤケているが、最初の4曲での味わいは、とても好み。古い真空管アンプとJBLのスピーカで聴くと、なんとも愉しい。レコード盤は勿論、オリジナルではないが、多分、1960年代のプレス。ジャケットが厚く、印刷に光沢がある。そして盤は黒光りし、これも厚い。駄目になった1970年代とは随分違う。十分じゃないかな?

 

Lennie Tristano

Lennie Tristano

 

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Lennie Tristano: Lennie Tristano (1955, Atlantic)
A1. Line Up(Lennie Tristano) 3:33
A2. Requiem(Lennie Tristano) 4:51
A3. Turkish Mambo (Lennie Tristano) 3:37
A4. East Thirty-Second(Lennie Tristano) 4:32
A5. These Foolish Things (Harry Link, Holt Marvell, Jack Strachey) 5:43
B1. You Go To My Head (J. Fred Coots) 5:19
B2. If I Had You (Jimmy Campbell, Reg Connelly, Ted Shapiro) 6:24
B3. Ghost Of A Chance (Bing Crosby, Ned Washington, Victor Young) 6:00
B4. All The ThingsYou Are (Jerome Kern, Oscar Hammerstein) 6:04
Lennie Tristano (p)
A1, A4: Peter Ind (b), Jeff Morton(ds)
A5 to B4: Lee Konitz (as), Peter Ind (b), Jeff Morton (ds)
Tracks A1 to A4 rec. NYC, 1955
Tracks A5 to B4 rec. live in the Sing Sing Room, Confucius Restaurant, NYC, summer 1955

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