K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

坂田明: The Tale Of The Heike (2011,12) 管の音色が昔より深まり、味わい深い

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 坂田明の語りは「際物」だと思っている。山下洋輔の「寿限無」の田中角栄のモノマネには参った。面白くない、のである。仲間内の宴会芸を見せられた、後味の悪さが残った。

  しかし、ジム・オルークとのセッションの格好よさ、は只事でなく30年以上ぶりに聴く気が復活した。近年「仕上がった感」がある山下洋輔と比べ、相変わらずガツガツと取り組んでいる感が凄いじゃないか、と思った。その二人が金沢に来るのだから、聴かなきゃ、と思っている。

 しかし、近作の平家物語は、やはり嫌な予感がする。勿論、祇園精舎を叫ぶのだろうが、如何なものか。田中啓文さんの本で取り上げていたので、まあいいかとレコード注文。

結論から云うと、オルークとのセッションで感じた「格好よさ」をそのまま維持したうえで、古典の感触も十分感じ、面白い仕上がりになっていた。何よりも、管の音色が昔より深まり、味わい深い。実に美しい。朗読は「自ら照れるような偽悪的な空気」が一掃され、古典に没入するなかでの感情の抑制や爆発であり、違和感はさほどない。まあ、声質は、琵琶法師のというよりは虎三じゃないか、とは思えたが。それもまた良い。

 前半はスタジオ録音。これはソロで、管の響きがよく収録されている。聴き飽きしない。後半はピットインでのライブ。これはオルーク他とのセッションだが、実にキレが良く格好いい。レコードはCDよりも収録曲数が多く、またCD音源もダウンロードできるので、お得だ。

平家物語

平家物語

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坂田明: The Tale Of The Heike (2011,12, Trost Records)
A1. Gion Shoja 9:00
A2. The Death Of Kiyomori 6:54
A3. The Matter Of The Six Paths 5:21
B1. The Assault From The Cliff 10:56
B2. The Death Of Atsumori 12:02
C1. The Death Of Kiso 3:20
C2. The Battle At Dan-no-ura (The Drowning Of The Former Emperor) 9:19
C3. The Chapter Of The Battle (live Version From Dvd)
D1. Gion Shoja (live Version From Dvd)
D2. The Death Of Kiso (live Version From Dvd)
D3. Sea Chanty Of Ondo (live Version From Dvd)
坂田明 (as, cl, b-cl, perc, bells, voice, read) , Jim O'Rourke (g, vo on C3, D1, D2, D3)
田中悠美子(三味線, reading on C3, D1, D2, D3)、石井千鶴(太鼓, perc, vo on C3, D1, D2, D3)、山本達久(ds, perc on C3, D1, D2, D3)
A1 - C2 Recorded at GOK Sound, Kichijoji on 4 and 26 August 2011
C3 - D3 recorded live at Pit Inn, Shinjuku, Tokyo, June 24, 2012.