K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

小川隆夫:スリー・ブラインド・マイスコンプリート・ディスクガイド (2017)

ボクがジャズを聴き始めた1970年代のお仕舞い、丁度、TBMの製造・販売が日本フォノグラムから行われるようになり、レコード番号に(P)が入るようになった時期。それを記念(?)した廉価盤シリーズで入手したのが最初。鈴木勲、山本剛、日野皓正のレコードを入手。とくかく、録音の良さとアメリカのジャズと全く違う「何か」に惹かれた。 

CDが出回るようになった時期、中古のLPレコード盤は安価で、TBMの中古盤も1000円代だった記憶があるが、ここ数年、価格が急上昇。再評価と人気の高まりは、ひしひしと感じていた。少しづつ気になるレコードは買い続けているのだけど。

その震源が所謂「和ジャズ」(ちょっと好きじゃないコトバ)ブーム的なことから来ている、ようなのだけど、それが何なのか、はあまり分からないのだけど。

そのTBMのディスク・ガイドが出ること自体が驚きなのだけど、かのブルノート・コレクションの小川氏なので、完璧なクロニカルな部分と、無駄のないアルバム評でなかなか読ませる。

だけど、この本の真価はクロニカルな密度の濃さ、ではない。TBMのプロデューサー・藤井氏、録音技師・神成氏、代表的な奏者・山本剛氏へのインタビューである。1960年代後半から1970年代の日本のジャズシーンが生き生きと浮かび上がる。副島氏の日本のフリージャズ界に関する記述とあわせ、熱かった時代の貴重な記録なのだと思う。断片的にはいろいろな話が書かれていたとは思うのだけど、これ一冊で全貌が見える、そんな貴重な本なのだ。

出版に深く感謝する。