K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

高田みどり:Through The Looking Glass (1983) ゆっくりと旋回する音場に身を任せながら

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 少し前に入手した佐藤允彦とのアルバムに続き。これも再発のレコード。海外盤である。音はまずまず。 

これを聴きながら、発売された当時(プラザ合意の前で円高不況直前)のことを思い出していた。石油ショックから世の中も癒え、高度成長は終わったが安定成長を謳歌という時代。為替も中庸で、輸出産業も元気。元気な日本人が世界へ溢れ出ようとしていた。今の中国くらいの感じじゃなかろうか。中進国から先進国になったという実感、をしっかり共有していた。もっとも民生品は市場シャアが高まったが、先端技術についてはまだまだで、追いつこうと一所懸命ではあったのだけど。

そんな時代、その余裕が文化的なものへ流れていった、ような感じ。松岡正剛の「遊」でぶち上げた「ジャポネスク」が広告代理店のキャンペーンになったり、堤清二のセゾンが文化を売りにしたり。だからジャズ、現代音楽の周辺が潤いはじめた頃、ではなかろうか。坂本龍一なんかも、現代音楽からYMOまでの振幅のなかで、時代の空気を巧く捕まえ、渡った人だと思う。

このアルバムもそんな時代の空気を思い出させる(個人的には)。だけど、そのような時代とともに風化するような部分はない。ライヒからの大きな影響を隠さない、ミニマルな音の造りは打楽器との相性は抜群。レコードジャケットのように色彩感豊かな打音が溢れている。ゆっくりと旋回する音場に身を任せながら過ごす時間、が楽しい。本でも読もうか。

Through The Looking Glass [Analog]

Through The Looking Glass [Analog]

 

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高田みどり:Through The Looking Glass (1983)
A1. Mr Henri Rousseau's Dream
A2. Crossing
B1. Trompe-l'oeil
B2. Catastrophe