最近は1970年代のジャズに割と回帰する時間が長い。聴きはじめが1979年なので、その当時の感覚がいまだに中心にあるように思っている。その頃、Strata-eastは終焉していて、ロフトジャズで活躍した奏者がIndia Navigationから出し始めた頃。
カウエルはアーサー・ブライスのIn traditionではじめて聴いたが、流麗な演奏ではあるが、、、という感じ。随分後にジャズバーの親父本で手にしたヴィーナスで聴いたが、あざとい感じで全くダメだった。
その後、ECMの「幻想組曲」を聴いたが、これは好み。同時期のキューンのアルバム含めてよく聴いた。1970年代のジャズをソフィスケイトした内容。聴きやすさと、同時代の匂いを両立させているので。
今回、1969年に英ポリドールで収録された本作を聴いたが、印象は「幻想組曲」と近い。ヴィーナス盤も含めてなのだけど、カウエルって器用で上手くて何でもやっちゃうピアニストなのだ。その意味ではキューンととても似ている。偉大なB級ピアニストなのだ。
キューンにしてもカウエルにしても、ECMで聴かせた良さ、のようなものは初期のアルバムのなかに要素が凝縮していると思う。器用さ以上に、彼らのピアニズムが垣間見えるように思えるが、どうだろうか。1960年代の「新主流派」的ピアノをさらにステップアップしたような清新さ、というか。コリアの一連のピアノ・トリオとともに、だ。
それでも、本作では電気ピアノやらラグっぽい曲まで獅子奮迅なので、器用さ爆発状態、ではあるのだけど。
追記:
ある時期(1970年過ぎ、パリ協定)まで、南ヴェトナム解放戦線は日本の報道でもヴェトコンと呼ばれることが多かったと記憶している。ヴェトナムのコミュニストだから、ヴェトコンと思っていたが、スペルが Viet Cong。Comじゃないんだ。どうでもいい話だけど。これは、日中国交回復前、北京政府の国家としての呼称を中共と呼んでいたことと同じ。パリ協定後は南ヴェトナム解放戦線と呼ばれるようになった、と記憶している。ベトコンは遥か彼方の小学校時代の記憶とともにある。
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Stanley Cowell: Blues For The Viet Cong (1969, Polydor=>Trio)
A1. Departure 7:08
A2. Sweet Song 3:02
A3. The Shuttle 8:07
A4. You Took Advantage Of Me 4:47
B1. Blues For The Viet Cong 4:18
B2. Wedding March 2:49
B3. Photon In A Paper World 9:03
B4. Travellin' Man 3:34
Stanley Cowell(p), Steve Novosel(b), Jimmy Hopps(ds)
Recorded in Polydor Studios, London 5th & 6th June 1969
入手したのは日本盤。十分!