K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

池間由布子: 野となり、山となる

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池間由布子: 野となり、山となる(2017)
A. DAY 18:27
B. DUSK 21:01
池間由布子(vo, g)
録音:2017年8月25日 京都 沢池
企画制作:東岳志 (Plant Lab.) & 永江大
録音&ミックス&マスタリング:東岳志
写真:成田舞
デザイン:坂脇慶

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[2019-09-06] フィールド・レコーディングに興味を持って入手したレコード

 

A面の昼には蝉とともに強い日差しが、B面の夜には牛蛙ともにぬるっとした大気の流れが、伝わる。

声とギターが、そのような背景音に贖うでなし、ただ同じように漂う。様々な環境音がアクセントのように振りまかれ、思いの外、大きな音響空間となっている。そのなかで、ぼんやりと歌い手の声と楽器の共鳴音が揺らいでいる。そんな軽い脱力の感じが心地良い。

これをレコードで聴く、という意味は何だろう。針を下ろすと、浅いスクラッチ・ノイズの向こうから蒸し暑い京都の夏が陽炎のように浮かび上がる。聴き手の環境音が軽く不可され、微妙にディジタル音源と異なる印象を与えている。レコードの音圧が付与され、音の距離感は接近しているのに、スクラッチノイズが「音の架空性」のようなものを与える。Hi-Fiと逆向きのヴェクトル。そこが記憶に「聴くという行為の物語」を浅く刻みつける。そんな感じ。

やはり、このアルバムは夏に聴くもののようで、昨年の夏に入手し、9月に入るとほどなくしまってしまった。今年もそうなるかな。