K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

坪口昌恭プロジェクト: 東京の宇宙人 (1997)今更なんだろうが, Mr.GoneよりWRらしい魅力に溢れている

東京の宇宙人(M.T.Man Lives in Tokyo)

坪口昌恭プロジェクト: 東京の宇宙人 (1997, Vivid Sound)
1. 孤独な深夜の天気予報
2. 恋愛感情のシミュレーション
3. M. T. DNA
4. 貴方の知らない夜について
5. 昆虫ギプス
6. 私の彼は宇宙人
7. Young & Fine
坪口昌恭 (key,vocoder,voice) , 菊地成孔(ss,ts,bs,DJ) , 水谷浩章 (el-b,b) , 外山明(ds,djembe,hi-hat)

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まだ暫く「坪口昌恭を聴く」モードが続く。聴いていた方々には、何を今更なんでしょうが、20年後に聴き始めたのだから仕方がない。

天気予報という曲名をみて、そりゃ分かるよね。ふーん、と思って待ち構えると、いきなり出会い頭にヤラれた。WRの美味しい要素、ショーターのサックス(みたいな音)、ザヴィヌルみたいなシンセサイザではじまる。それが大好きだったWR、ジャコ加入前の音かな、のようなことを考えながら聴いている。そこで掴まれたまま、WRから逸脱したり戻ったり、堪らないなあ。シメがyoung and fineだから参った。この曲、ジャコ加入以来、最もショーターの影が薄くなった時期のアルバムMr. Goneのなかで、がっつりショーターのテナーを楽しめる曲。要は初期〜中期WRの匂いを残している。

このアルバムの狙い所を端的に与えている。好きだったWRのエキスを集めたようなアルバムなのだけど、それがリアルなWRの音ではない。改めてWRを聴き直しても、このアルバムと同じ曲調のものは一つもない。我々聴き手の脳内WRを再生しているのだ。それが坪口/菊地の音の音響的な側面で「作られている巧みさ」。そう、実際のWRよりもWRらしく聴こえる、のだ。

よく分かっていないのだけど、クラブジャズとかと云ってハードバップの勢いだけコピーしたバンドって、どうも気持ちが悪い。これはそうでなく、WRが作った70年代フュージョン(クロスオーバー)の枝葉(WRを改めて聴くと、時期を経るほど、気持ち悪い装飾音が多い。ザヴィヌルはWR解散後のほうが面白い)を落とし、その魅力の骨の部分を再構築したような魅力に溢れている。凄く、面白い。今更なんだろうが、Mr. GoneよりWRらしい魅力に溢れている。