K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

池畑修平: 韓国 内なる分断: 葛藤する政治、疲弊する国民 (2019, 平凡社)

韓国 内なる分断 (平凡社新書0917)

韓国 内なる分断 (平凡社新書0917)

  • 作者:池畑 修平
  • 発売日: 2019/07/12
  • メディア: Kindle版
 

Kindle版でのバーゲンで入手。本も物理的なマテリアル重視派なのだけど、眼が弱っているので、Kindleの有難みを痛感する。(CDの本質はディジタル・データなので配信で良いと思っている。音楽の物理的媒体とはレコード)

この2年余りの日韓関係の悪化が残念。技術者の世界では、長く日韓合同学会などを通じた連携を行い、草の根の友好のようなものを涵養してきたと自負はあるが、いつか普通の国の関係へ昇華させるとの希みも儚く散ったような感覚がある。所謂日帝時代を経験された老先生間の関係は、日韓ともに抑制的であり、全てを呑み込んだうえでの協調であったと思う。そのような時代が遠くなった今、そのような過去の問題が雑に扱われるが故の様々な粗相が両国に生じているのだろう。

この本は最近の韓国情勢を理解する上で非常に有用であった。韓国の内なる分断に焦点をあて朴政権から文政権への「ロウソク革命」をドキュメンタリー的に追っている。その文脈の中で、親日残滓や慰安婦財団、徴用工問題を位置付けている。問題を親日や反日で切り分ける幼稚な議論が多い中(所謂右のメディアの専売ではあるが、自己の立場による潤色は所謂左のメディアにも感じる場合がある)、そのような視点ではなく、内なる分断に翻弄される韓国政治の中で、対日政策が軽く扱われ、パンドラの箱が開けられる、その様子が鮮明に描かれている。

政権交代とともに、時の政権に付託し、司法までが白黒塗り替えを行う様は凄まじい。韓国の政治、司法の仕組みが人事権を含めて説明されているので、実に面白かった。やはりそのような仕組みの問題は重い。長期政権末期の日本も酷いのだけど、いや韓国も大変だね、が読後感。