K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

自由爵士音盤取調掛: 日本フリージャズ・レコード図説(カンパニー社)

日本フリージャズ・レコード図説

日本フリージャズ・レコード図説

 

 これは日本のフリージャズのレコードに関する決定版とも云うべき書。その意味では、田中啓文の「聴いたら危険! ジャズ入門」とともに、この方面の数少ない読み物。

しかし田中フリージャズ本が、奏者の紹介と代表作紹介の体裁、つまりディスクガイド的な存在であるのに対し、本書はディスクを網羅的に掲載しているにも係わらず、ディスクガイド的な紹介文はなく、1行コメントのみ。ガイド本をディフォルメしてしまった感が凄い。だから、奏者をある程度知らないと、どれを聴けば良いか全く分からない。しかし評者の主観は最小限であり、笑える一行コメントで十分なのだ、という点が発見。

稠密なディスク情報の集積が、1969年から1990年くらいまでのフリージャズの動きを集約していて、それ自体の饒舌さを感じさせる。いや、素晴らしい編集。

その分、欄外のコラム(初期の近藤等則、佐藤允彦のトリオなど)も楽しいし、座談会とその注釈の充実さには目眩。読みどころが実に多い。

読んでいて楽しかったなあ。編集・出版お疲れ様でした。

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