K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Keith Jarrett: France 1972 キース・ジャレット・トリオの振れ幅

KEITH JARRETT / キース・ジャレット / France 1972 / ライヴ・イン・パリ1972(2CD)

Keith Jarrett: France 1972 (HI HAT)
(Disc 1)
1. Coral
2. Forget Your Memories
3. Take Me Back
4. Standing Outside
5. Piece For Ornette
6. Common Mama
(Disc 2)
1. Moonchild
2. The Magician In You
3. Follow The Crooked Path 1
4. Follow The Crooked Path 2
5. Expectations
6. The Cicular Letter (For JFK)
Keith Jarrett(p, ss, fl), Charlie Haden(b), Paul Motian(ds)
Live At Gran Studio 104 In Paris June 9th 1972

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1960年代のおしまいから1970年代はじめのキース・ジャレットの魅力、はレコード盤では伝わり難い印象がある。彼の演奏や曲の振れ幅(フリー、ゴスペル、フォークそしてクラシック的美音)が大きく、アトランティックやヴォルテックスの単盤ではその振れ幅のサンプリングが粗く、まとまりのないアルバム、という印象が残る。コロンビアの2枚組は、収録枠以上に構想が広がって、その印象は拭えない。

だからアイヒャーの統制が入ったECM盤の良さ、というのは確かにあると思う。アルバムとしての完成度、が格段に違う。

しかし、それはキース・ジャレットの多様性や躍動を削いでいることの代償であり、他の奏者を含め「アイヒャー味」となっていることに対する違和感が、年々強くなっている。

1972年のハンブルグでのヘイデン、モチアンとの演奏を、ECM・ブート双方で聴くと、まさにそのジレンマの縮図。

このアルバムはハンブルクと同時期・同メンバーの演奏であるが、曲目がかなり違っていてExpectationsからの曲が含まれる。そしてハンブルク以上に荒っぽくて、当時のキース・ジャレット・トリオのダイナミクスのようなものを余すことなく伝えている。面白いことに、彼の振れ幅が丸ごと収録されているが、ライヴのなかでは「音場の統一感」のようなものが得られていて、ECM以外のアルバムで感じるような「まとまりのなさ」は全く感じない。

表現領域を広げることに取り組む3人の生々しいドキュメントであり、1980年代以降のキース・ジャレットに全く感じない、前進する力が漲った演奏だと思う。

演奏そのものはBootやyoutubeで知られたもので、初出ではない。音も悪くはないが、良いというものでもない。こんなBootに和文取説をつけて販売する乞食商売もあるのだな、と少々呆れている。Bootはbootらしく日陰で売るべきじゃないの、と思った次第。

 

こんなのもあるようだ。

France 1972

France 1972