K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

橋本一子: view (2021) 流れる時間・動かぬ時間、音の背後にある音

橋本一子: view (2021, najanaja)
1.blue
2.view
3.all the things you are
4.blackbird
5.giant steps
6.beijo partido
7.my foolish heart
8.good girl
9.danny boy
10.planet
11.before and after the introduction
橋本一子(p, vo), 藤本敦夫(ds, b), 橋本眞由己(chorus), 類家心平(tp), 菊地成孔(as)
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1曲めのblueで少し憂いのあるソロを聴いた後、viewで定番のような切れの良いピアノの打音、「ウソ語?」のヴォイス、シンバルとベースの彩りが溢れ出た瞬間、もう安心。橋本一子のアルバムだよね、って感覚。

 

熱心なファン、という訳ではないのだけど、1980年代中頃にジャズ系の「ちょっといい感じにタガが外れたような音」が好きだった。近藤等則、清水靖晃、橋本一子あたりが嚆矢。本多俊之はちょっと外れていたかな。小島本が見事にそのあたりをトレースしていて嬉しかったな(超個人的名著!):

 多分、マイルスのアガルタあたりがいいな、という感覚が菊地雅章のスストで増感されて、復活マイルスで行き場がなくなった頃。そのあたりを、彼らが引き受けてくれたのだと思っている。

橋本一子のVivantは今にして聴くと英語が少しアレで、今の「ウソ語?」に昇華してくれて良かったのだけど、それにしても良く聴いたな: 

前置きが長かった。このアルバムを聴いていると、1980年代半ばからの30年以上の流れる時間に想いがいってしまう。それは自分の時間であって、アルバムを聴いているとVivantからの動かぬ時間を強く感じてしまうからだ。まったく当時から変わらぬ磁場のようなものを強く感じる。本当に長い間、橋本一子の音に引っ張り続けられているのだ。

ただ今回のアルバムは以前よりも音が重層的で、音の背後にある音のようなものが淡い装飾になっていて、それが異様に心地よい。ゲストの類家心平,や菊地成孔の音が美味く編曲されている。そんな淡い背景の前で漂う音や声。それは変わらぬものであり、そして変わったものでもある。all the things you are後半での強靭で粒立つ打音が気持ちよく、こんな音あったっけ。そのままセシル・テイラー的なフリーやってよ、という感覚。

blackbirdやgiant stepsも橋本世界で、何十年変わらぬ世界観で万華鏡のように音に魅せられる、そんな時間も貰った感じ。ありがとう。


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