K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

「小説」家・石原慎太郎のこと

石原慎太郎の本は一冊しか読んでいない:

海外出張の機内で瀬戸内寂聴の奇縁まんだら(続)を読んだ。(正)も含め,横尾忠則のイラストとあわせ奇抜な昭和作家伝となっており楽しい。この本を読んでいて既視感が強く、何だろうと考えていた。そのうちに思いだした。石原慎太郎の"わが人生の時の人々"。同じような趣向の本は沢山あるが、これらは似ている。天性の”懐に入る才:ひとたらし”。二人とも笑いで破顔したときの力はTVカメラを通じても伝わるくらい凄い。本のテイストはとても似ているが、瀬戸内さんのほうが色香をまとう品があった。知事殿の本は自慢にみえなくもない箇所多し。品が足りない。
有吉佐和子のあり方(才あれど色も縁もなし)が、ふたりとも変わらないのがおもしろい。

この本はゴシップ的な面白さ、だけであったと思う。

思えば、1970年の三島由紀夫の自裁が、正統的な右翼(+任侠系右翼)の時代から、軽い軽いネット右翼への旋回点ではないか。その中心にいたのが石原慎太郎であり、対中侮蔑などのヘイトの芸風の種を蒔いた人なんだと思う。本の感想と同じで、品が足りない。日本の品性を貶める言説の元祖ではなかろうか。その後継の面々が劣化複製であることは哀しい。

政治に進出した頃、自民党の大物(忘れた)に「大説を書けないのだから小説でも書け(だったか)」と揶揄されたのも、その大物の慧眼に驚く。知事時代に副知事である猪瀬直樹と尖閣諸島に手を出したのは悪手であり、領土問題を国際的に認知させる行為であったことを改めて認識せねばならない。これまた小説家たる所以である。

とは云え、(瀬戸内寂聴を追いかけた彼に)合掌。