K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

坂本龍一: CODA Collector's Edition with PERFORMANCE IN NEW YORK: async (2018) 映像がさらにsyncして快楽を増感する

坂本龍一の音、はボクにとっての好き嫌いが極端に出てくる音楽家であり、手放しで良い、とは勿論思っていない。初期の電子音は奇矯な音が耳障り。渡辺香津美のKILYNや初期のYMOなんかでも、そのように感じる。一方、NEO GEOはとても好み。要は異種間音楽の接合が上手な作曲家であり、頭がよい。しかし身体性・即興性が強まると、..ということだと理解している。だからアジ演説の底の浅さ、が気になるのだと思う。

近年の音、asyncはよくわからなかった。しかし最近になってambient系の音が愉しめるようになって、少し周辺含めて気になってきた。asyncやout of noise冒頭の「いかにも」な導入をスキップすると、かなり純度の高い音が続く、快楽性の高いambient。

この映像作品も冒頭(PERFORMANCE IN NEW YORKの前に入ったドキュメンタリータッチの映像の冒頭)は残念な感じ(問題意識は理解できるが、表現行為に結びついていない)。しかし映画PERFORMANCE IN NEW YORK: asyncは実に素晴らしい。あのように「造られた音」が、ライヴでどのように展開されるのか、坂本龍一の身体の動きと音場がsync(同期)した、その瞬間が強い印象を与える。本当はasync(非同期)なんだけどね。武満徹の映画音楽のような叙情性とCageの音のような抽象性のなかの美しさ、そのようなものが混じり合った美しさに浸る。映像がさらにsyncして快楽を増感する。

ああ、もっと早く聴けばよかった、と思う。


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