K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

(ECM2808) Giovanni Guidi: A New Day (2023) 久しぶりに愉しめるECMの新譜を聴いた

(ECM2808) Giovanni Guidi: A New Day (2023)
A1. Cantos Del Ocells (Traditional) 6:23
A2. To A Young Student (Giovanni Guidi) 3:57
A3. Means For A Rescue (Giovanni Guidi) 7:42
A4. Only Sometimes (Giovanni Guidi, James Brandon Lewis, João Lobo, Thomas Morgan) 5:48
B1. Luigi (The Boy Who Lost His Name) (Giovanni Guidi) 7:30
B2. My Funny Valentine (Lorenz Hart, Richard Rodgers) 5:52
B3. Wonderland (Giovanni Guidi) 6:43
Giovanni Guidi(p), James Brandon Lewis(ts), Thomas Morgan(b), João Lobo(ds)
Design: Sascha Kleis
Recording engineer: Gérard de Haro
Mastering: Nicolas Baillard
Producer: Manfred Eicher
Released:    Jul 12, 2024
Recorded: August 2023, Studios La Buissonne, Pernes les Fontaines

https://ecmrecords.com/product/a-new-day-giovanni-guidi-james-brandon-lewis-thomas-morgan-joao-lobo/
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ジャズの世界への入口はECMだった。1979年の頃。そこから過去へ遡行を続けるとともに、常に今を供にしている感覚もある。その10年前、1969年のECMの設立は、欧州レーベルとしての意味合いよりも、米ジャズの再コンパイルしたという位置づけ。マル・ウォルドロンがスタートだしね。そんな米ジャズのライオンやヴァン・ゲルダー的な世界感に区切りをつけ、その音響の違いが生む冷涼な肌合いが実に新鮮だった。さらに米ジャズの周縁、ロック、エスニック、クラシック、現代音楽、を取り込んでいくradicalな意味でのfusionに強い魅力があった。そこが、EnjaやSteeple Chaseとは全く違っていた。

というボクのECM感の起点からすると、いつしか違うなあ、というアルバムが多くなった。欧州奏者の甘いアルバム、そこへの安易な残響の付加。過度の残響処理が音の輪郭を崩していることが多く、残念録音のアルバム多し。そんな印象。

惰性でECMのレコード盤は書い続けてはいるが、惰性なんだよな。そこが残念になっていた。

久しぶりに、針を置いた後に引っ張られる盤が届いた。珍しく音が粒立っている。この盤は残響過多の手前で抑えられ、絶妙な音響空間になっている。ピアノの音のキレが良い(もう少し、残響を抑えたら、もっと良かった)。久々に聴くモーガンの演奏も録音も素晴らしい。ベースの胴体・弦の揺動のようなものが伝わる。モーガンが与えるアクセントが、甘い欧州ジャズ、への転落を許していない、と思う。アルバムの要。モーガンの上でこそ、ピアノが映えているように感じる。

テナーは、ジャレットのBelongingsでのガルバレイク役なんだけど、こじんまりして音色に広がりがない。モンク・カルテットのラウズ役かな。管の音色を与えて、音場に厚みを持たせる役。

久しぶりに愉しめるECMの新譜を聴いた。録音技師のGérard de Haroをチェックしなきゃ。