
(ECM 2829/30) Keith Jarrett: At The Deer Head Inn -The Complete Recordings (1992)
At The Deer Head Inn
A1. Solar (Miles Davis) 11:21
B1. Basin Street Blues (Spencer Williams (2)) 9:09
B2. Chandra (Jaki Byard) 9:21
C1. You Don't Know What Love Is (D. Raye, G. DePaul) 12:55
C2. You And The Night And The Music (Arthur Schwartz, Howard Dietz) 5:41
D1. Bye Bye Blackbird (Ray Henderson) 10:13
D2. It's Easy To Remember (Richard Rodgers, Lorenz Hart) 7:47
The Old Country
E1. Everything I Love (Cole Porter) 8:11
E2. I Fall In Love Too Easily (Jule Styne And Sammy Cahn) 9:54
F1. Straight No Chaser (Thelonious Monk) 8:51
F2. All Of You (Cole Porter) 9:46
G1. Someday My Prince Will Come (Frank Churchill, Larry Morey) 6:56
G2. The Old Country (Nat Adderley) 12:54
H1. Golden Earrings (Livingston & Evans, Victor Young) 8:25
H2. How Long Has This Been Going On (George & Ira Gershwin) 8:32
Keith Jarrett8Gary Peacock (b), Paul Motian(ds)
Design(The Old Country): Sascha Kleis
Design(At The Deer Head Inn): Barbara Wojirsch
Liner note(At The Deer Head Inn): Keith Jarrett
Liner note(The Old Country):Mansfred Eicher
Engineer: Kent Heckman
Producer: Bill Goodwin
Recorded September 16, 1992 at the Deer Head Inn.
Previously released on CD in 1994 (ECM 1531) and in 2024 (ECM 2828).
At The Deer Head Inn - The Complete Recordings - ECM Records
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新たな名盤の誕生だと思う。
この盤を聴きながら、これを書いているうちに確信に近いものを持った。1994のAt the Deer Head Innと2024年のThe old countryの2枚のCDをそのままLPレコード4枚組にしたアルバムじゃないか、と思うだろう。ボクもそう思った。価格が通常の2枚組がEUR37.9に対し、4枚組でEUR124.9。随分と高価で、入手する価値はあるのか、迷いはあった。
しかし、後述するように、この盤はKent HeckmanとBill Goodwinによって残された本来のマスターテープに近い音を収録しているように思える。だから、ペンシルバニアの小さなクラブの音場が眼前に広がり、その親密な空気の中で聴く味わいが、「コンサート・ホール」で聴く音場を残響付加で強調するECMのアルバム群(近年、それが過度に強調され辟易していた)とは、全く異なる印象を生んでいる。大袈裟に言うと、ビル・エヴァンスのヴィレッジ・ヴァンガードを聴くような感覚になった、のだ。これは旧盤2枚にはなかった。
そう、新たな名盤の誕生だと思う。
(この文章は最後に書いた。下の文を書いた後、Abstractが必要だな、と思った。)
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過去、2つのアルバムとして発売されていたDeer Head Innでのライヴのcomplete盤。
といっても、1つの箱に2つの2枚組アルバムが入れてあって、それぞれがECM 1531/At The Deer Head Inn とECM 2828/The old country、という形態。追加曲はない。それでも1つの箱に入れパッケージ化したのでECM 2829/30という番号をとっている。ジャケットも厚手で、最近の安っぽいジャケットとは随分違う。随分と高価であるためか?価格が4枚でEUR124.9。通常の2枚組がEUR37.9だからね。
ECM recordsのwebサイトより:
ディア・ヘッド・インでの親密なライヴ・レコーディングからの最初のセレクションは、ジャレットがゲイリー・ピーコックとポール・モチアンと共に、初期のペンシルバニアの会場に、そして今にして思えば歴史的な復帰を果たした様子を捉えたもので、「この音楽には、キース・ジャレットの最高傑作のような颯爽さと臆面もない叙情性がある」とステレオファイルは絶賛している。第2弾は『The Old Country』と題され、第1弾から30年後の2024年にリリースされたが、同様に高い評価を受け、ガーディアン紙のジョン・フォーダムは「歌をベースにしたジャズ・イマジネーションの最高傑作」と評した。この2枚のアルバムはLP4枚組で、2種類のチップオン・ゲートフォールド・ジャケットに収められ、デラックスなスリップケースに収められている: コンプリート・レコーディングス。このボックスセットには2度目のプレスはなく、このエディションのみに限定されている。キース・ジャレット:「このテープを聴けば、ジャズが何であるかがわかると思う。」
最初発売されたAt The Deer Head Innを聴いたとき、モチアンがドラムで参加が話題の、割と地味なアルバムという感じで、印象が薄かった。ある種の期待、70年代前半のキース・ジャレット・トリオのアヴァンな匂いのようなもの、に応えてくれる要素は全くなかった、というのもある。
今回届いたアルバムを聴いてみると、過去のCD盤と音が違うことに驚いた。再マスタリングしているようだ(そのような記述はwebにもレコードにも記載はない)。過去のCDにあった残響付加を抑えめにしている。その結果、音の輪郭が随分と明瞭になってピアノの細かなニュアンスの変化が素晴らしく伝わる。完全に釘付けで聴かせる。ドラムの打音も然り。
過去のECM盤での音響処理で、音の輪郭が滲んでいて、そこがストレスになっていた。だから、このレコードでは、どの部分を切り取っても、分解能が高いピアノやドラムの音を愉しむことができた。その代わり、演奏が終わるとブーンという低音が入っていることに気がつく。空調や冷蔵庫の共鳴音のようだけど、演奏中は気にならない。
聴衆との距離感の近さもこのアルバムの魅力。クラブで聴いている感覚は、エヴァンスのヴィレッジ・ヴァンガードの感覚。コンサート・ホールとは違う。
改めて気がついたのだけど、録音技師はKent Heckman、プロデューサはBill Goodwin。典型的なECMのアルバムから外れている。アイヒャーはThe Old Countryでのライナーノートのみにcreditされている。
ここで両アルバムに掲載されたライナー・ノートを記載する。これが興味深い内容(もとのCDと同じかどうかわからない):
The Deer Head
When I was about 16 and still living in Allentown, PA. (where I was born), I got a phone call from a drummer I didn't know, who said that there was a place called the Deer Head Inn that needed a trio to fill in one night for the house trio. He also said this was a jazz room and we could play what we wanted.
At this time I had a day job as a shipping clerk at an electrical supply company. This job payed $48 per week and I had just graduated from high school. I had worked locally with some fairly good players (for Allentown), but these jobs were either
"commercial" gigs or they were somehow "strange" otherwise.
I did often play marimba in a trio because there was no piano at the shopping center bar where we worked.
So, the Deer Head Inn was my first serious trio job on piano.
Over the years, the Deer Head has remained a place for jazz (over 40 years!) and this policy has remained the same (not to mention the room itself). When the owners (Bob & Fay Lehr) retired, their daughter and son-in-law took it over. As a rechristening of their renewed commitment to good music, I decided to play there again. In the intervening years I played often at the Deer Head, but mostly as a drummer in the house trio (with Johnny Coates on piano). Many great players would come and sit in every weekend, and once, while I was sitting in on guitar, Stan Getz offered me a job (as a guitaristl).
Not only had I not played piano at the Deer Head for 30 years, but I hadn't played with Paul Motian for 16 years. So it was like a reunion and a jam session at the same time.
This particular evening was a warm, humid, rainy, foggy autumn night in the Pocono Mountains. The room was full of people, and outside on the porch more people listened through the screen doors.
My friend Bill Goodwin had offered to make a documentary recording for me, and when I heard it I said to myself that this had to be released someday. I think that you can hear on this tape, what jazz is all about.
Keith JarrettThe Deer Head
私が16歳ごろ、まだペンシルベニア州アレンタウン(生まれ故郷)に住んでいた頃、知らないドラマーから電話がかかってきました。その人は、デアー・ヘッド・インという場所で、ハウス・トリオの代役として1夜だけ演奏してくれるトリオを探していると言いました。また、そこはジャズ・バーで、好きな曲を演奏してもいいと付け加えました。
当時、私は電気機器販売会社で出荷係の昼間の仕事をしており、週給$48でした。高校を卒業したばかりで、地元のアレンタウンでは比較的良いプレイヤーたちと演奏していましたが、これらの仕事は
「商業的な」仕事か、何らかの理由で「奇妙な」仕事ばかりでした。
私はよくトリオでマリンバを演奏していました。なぜなら、働いていたショッピングセンターのバーにはピアノがなかったからです。
したがって、ディア・ヘッド・インは私の最初の真剣なトリオのピアノの仕事でした。
年月が経つにつれ、ディア・ヘッドはジャズの場として(40年以上!)変わらず、その方針も変わっていません(部屋自体も同様です)。オーナーのボブとフェイ・レアーが引退した後、彼らの娘と婿が経営を引き継ぎました。良い音楽への新たなコミットメントを表明するため、私は再びそこで演奏することを決めました。その間、私はディア・ヘッドでよく演奏しましたが、主にハウス・トリオのドラマーとして(ジョニー・コーツがピアノを担当)。週末ごとに多くの素晴らしいプレイヤーが参加し、ある時、私がギターで参加していた際、スタン・ゲッツが私にギタリストとしての仕事をオファーしました。
私はディア・ヘッドでピアノを弾いてから30年、ポール・モティアンと共演してから16年が経っていました。そのため、再会とジャムセッションが同時に起こるような特別な夜でした。
その夜は、ポコノ山脈の温かく湿った雨と霧の秋夜でした。部屋は人で溢れ、外のプロムナードではスクリーンドア越しにさらに多くの人が聴き入っていました。
私の友人ビル・グッドウィンがドキュメンタリー録音をしてくれると申し出てくれ、それを聞いた時、いつか絶対にリリースしなければならないと思った。このテープには、ジャズの本質が感じ取れると思う。
Keith JarrettThe Old Country
More from the Deer Head Inn
The music from the Deer Head Inn has a special place among Keith Jarrett's extensive reckonings with the American songbook, the spontaneously organized performance of September 1992 marking the only occasion on which Paul Motian and Gary Peacock played together with the pianist. Paul, of course, was a veteran of Keith's great "American Quartet" with Charlie Haden and Dewey Redman, and Gary, at the time of the recording, was a committed member of the group completed by Jack DeJohnette, usually referred to as the "Standards Trio".
If this was a first and only time with Keith, however, Gary and Paul could also draw upon a musical understanding they had shared in the early 1960s alongside Paul Bley, as well as formative individual experiences with Bill Evans. The music from the Deer Head Inn, recorded live before a small but attentive audience, finds these players honouring the song forms of the standard tunes that Keith summons forth, while also inflecting the music with their own character. Countless musicians have played these tunes, but not like this.
We released the first selection of music from the Deer Head Inn in 1994, thirty years ago, and, returning to the original recordings recently, Keith and I felt that it would be good to share more of it.
Manfred EicherThe Old Country
More from the Deer Head Inn
ディア・ヘッド・インの音楽は、キース・ジャレットがアメリカン・ソングブックと向き合った数多くの作品の中でも特別な位置を占めています。1992年9月に即興で組織されたパフォーマンスは、ピアニストと共にポール・モティアンとゲイリー・ピーコックが共演した唯一の機会でした。ポールは、もちろん、チャーリー・ヘイデンとデューイ・レッドマンとともにキースの偉大な「アメリカン・カルテット」のベテランであり、ゲイリーは、この録音当時、ジャック・デジョンネットとともに、通常「スタンダード・トリオ」と呼ばれるこのグループの献身的なメンバーでした。
しかし、キースとの共演が今回が初めてかつ唯一だったにもかかわらず、ゲイリーとポールは、1960年代初頭にポール・ブレイとともに培った音楽的理解と、ビル・エヴァンスとの個々の形成期における経験も生かすことができました。少人数の熱心な観客の前でライブ録音されたディア・ヘッド・インの音楽は、キースが呼び起こすスタンダード曲の歌形を尊重しつつ、各プレイヤーの個性を反映したものとなっています。この曲を演奏したミュージシャンは数えきれないほどいますが、このような演奏は他にありません。
30年前の1994年に、ディア・ヘッド・インでの演奏曲の中から最初のセレクションをリリースしましたが、最近、元の録音に戻ってみて、もっと多くの曲を共有したいと思ったのです。
Manfred Eicher
上記ライナー・ノートが旧CD盤と同じかどうか、確認はしていない。少なくともアイヒャーの文章は、このレコード盤のライナーになっていることは確か。
キース・ジャレットの文章で興味深かったのは、ジョン・コーツJr.への言及。昔のインタビューでは、ジョン・コーツJr.は知らない、関係ないようなこを言って日本の評論家の怒りを買っていたような記憶がある。1980年頃の話。キース・ジャレットの近年の評伝を読みたくなった。
アイヒャーの文章はとても率直で、ピーコック、モチアンとの共演を、ブレイやエヴァンスの共演歴がある2人との関係性で説明している。そうジャズの歴史の中で、そのような系譜にピンが留められるのだ。デジョネットはエヴァンスとの共演はあれども、多分、マイルスとの関係性のなかで語られる奏者。ピーコック、モチアンとの再びの邂逅、それも小さなジャズ・クラブでの録音の意味、それをアイヒャーが指摘している。だから「元の録音に戻ってみて」というのは、ECM固有の「コンサート・ホール」や「教会」のような広い空間を模擬したような強い残響付加を行うのではなく、Kent HeckmanとBill Goodwinによって残された本来のマスターテープを尊重する、ということではないか。熱い拍手のみならず、空調音?まで取り込まれ、眼前に演奏が繰り広げられる音場、が提供されているのだ。エヴァンスのヴィレッジ・ヴァンガードに地下鉄の通過音やグラスの音が入っていたように。だからこそ、ジャズの名盤たり得る「何か」が蘇った、のではないか。
webによると再プレスはない、らしい。念の為に記する。


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