K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Arturo Benedetti Michelangeli: Ravel piano concerto in G(1957) 技巧の魅惑

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Arturo Benedetti Michelangeli: Ravel/Klavierkonzert G-Dur, Rachmaninoff/ Klavierkonzert Nr.4 G-moll (1957, His Master's Voice)
Electrola – E 90 914
A. Konzert Für Klavier Und Orchester G-Dur(Maurice Ravel)
A1. Allegramente
A2. Adagio Assai
A3. Presto
B. Konzert Für Klavier Und Orchester Nr.4 G-Moll Op.40(Sergei Rachmaninoff)
B1. Allegro Vivace
B2. Largo
B3. Allegro Vivace
Arturo Benedetti Michelangeli(p)
Ettore Gracis(Conductor), Philharmonia Orchester London

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多分、発売当初の西独盤。このラヴェルのコンチェルトとして初めてのステレオ録音だったようだが、この盤はモノラル。バランスはよく全く気にならない。随分前に札幌に出張したとき、古レコード屋でみつけた。

安レコードで、音質は古色蒼然という感じで、録音された時代の空気を味わうようなものだな、と思っていた。

最近導入した管球式イコライザで聴いてみた。古い欧州盤なので、イコライザの位置はLondon。RIAAと比較し、高音は強く強調し、低音は抑制。低域に寄っていた音のエネルギーを高域に引っ張る。

驚いたことに音の鮮度が抜群に向上。ラヴェルの協奏曲、第2楽章の弱音の蠱惑、のみならず第3楽章の強音での濁らない連打、の美音に魅了された。気持ち良すぎる、のだ。

普段、家に居るのは夜間なので、大きな音が出せない。技巧の魅惑が強烈に詰まったレコードを、少し大きめの音で鳴らして、隅から隅までような気がする。

https://music.amazon.co.jp/albums/B010Y6D82G?ref=dm_sh_1264-af44-76c7-c68c-f145b

 

[2011-10-18]

Arturo Benedetti Michelangeri: Ravel piano concerto in G (1958)

Rachmaninovの協奏曲とカップリング

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 あの一瞬を聴きたいがために買ったLPレコードがある。ミケランジェリラヴェル:協奏曲ト短調、第二楽章アダージョの真ん中あたりからの数分。ピアノの音が楽器のボディを失い、奏者の肉体からも離れ、いずことも分からぬ世界に浮遊する音となっている。ときとして強く安らぎ、そして感情が何処にに連れ去られるか分からぬ不安な気持ちを掻き立てる。マジカルな音とはこんな音だろうと思う。やがてゆっくりと地に降り立つ。今夜は繰り返し、LPレコードに針を下ろしている。

 無論、第三楽章での弾けるような、さりとて低い温度を維持した音の快感も素晴らしい。だけど、第二楽章の浮遊感で感じる戦慄は何とも形容しがたい。

 20世紀の早い時期にジャズの影響(といっても禍々しい新大陸のダンス音楽としてのジャズ)を受けたという、この曲そのものはあまり好きでない。第一楽章、第二楽章の終わり方がなんとも臭う。聴いていて恥ずかしくなってしまうのだ。だからクラシックの師匠に教えてもらって暫くは聴いていなかったくらい。でも気がつくと、それを差し引いても余りある、あの一瞬を聴きたいがためにCDだけじゃなくて、LPまで手に入れた次第。ドイツEMI製。

 だけど最近発売されたEMIのCD BOXで聴く同じ曲は、Amarraという再生SWを通してやると、より甘露な音となって迫り来る。だからクラシックでのLP蒐集熱が一気に下降しているのだ。もともと音質がよろしくない古い録音ということもあるのだけど。されどLPレコードのスクラッチの向こうに匂い立つミケランジェリのピアノを聴く愉悦。針が上がって、全てが終わったときの静寂に何を感じているのだろうか?

 ちなみに、映画ゴジラのテーマ、のようなフレーズが第三楽章のはじめにあるのは、クラシックご存じの方には有名なことだそうです。

youtubeでも、あの一瞬は楽しめますよ。