K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

(ECM2681) Andrew Cyrille: The News (2019) Beyond Eicherの「あるべき音の姿」が

The News

(ECM2681) Andrew Cyrille: The News (2019)
1. Mountain (Bill Frisell) 8:25
2. Leaving East Of Java (Adegoke Steve Colson) 8:49
3. Go Happy Lucky (Bill Frisell) 5:21
4. The News (Andrew Cyrille) 5:34
5. Incienso (David Virelles) 5:35
6. Baby (Bill Frisell) 5:34
7. Dance Of The Nuances (Andrew Cyrille, David Virelles) 7:24
8. With You In Mind (Andrew Cyrille) 7:11
Bill Frisell(g), David Virelles(p, synth), Ben Street(b), Andrew Cyrille(ds)
Design:  Sascha Kleis
Engineer: Rick Kwan
Assistant engineer: Christopher Gold
Mastering: Christoph Stickel
Producer: Sun Chung
Recorded August 2019
Sound on Sound, New Jersey

http://ecmrecords.com/shop/1605702383/the-news-andrew-cyrille-quartet

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音楽を聴き続けていると、人に寿命がある、ということに日々接し、麻痺していくような感覚がある。いつも誰がの訃報に接している。遠くで津波に引き込まれる様子を眺めている感覚なのだけど、それが40年以上も続いていて、その津波が足元近くにまで来ている。

日常のようにECMの新譜が届けられるのだけど、マンスフレッド・アイヒャーがプロデュースするものは、その終焉を多くの人が気にしているに違いない。ボクは近年のアイヒャー作品(とあえて呼ぼう)の多くが、昔の輝きほどではない、ように思えている。The Most Beautiful Sound Next To Silenceという惹句に自縄自縛になっている、ように思えてならない。1970年代の現代音楽、即興音楽、ジャズ、ロックの境界をアジールとして縦横無尽に音を創っていた頃、と比べると。sounds and silenceを観て、キース・ジャレット並に自己陶酔のなかに居るように見えたしね。

そんなボクでのやはりアイヒャーのECMの行く末は気になる。キライも好きのうち、なのだ。今のBlue Noteは案外キライじゃないが、ライオンからの連続性で語られると強い違和感を感じる。先日の映画でもそうだし、売り出しの「評論家」でそんな論調が見えると、現Blue Noteのブランディングに巻き込まれている姿が透けて嫌らしい。

このアルバムの前置きで、こんなことを書いているのは、Beyond Eicherの「あるべき音の姿」が、このアルバムに強く感じられたから。

ボクにしても、やはり気になる。ニュー・ジャージー録音で、Sun Chungがプロデュース。1970年代のECMは欧州の奏者は案外少なく、米奏者・米録音をアイヒャーが新しい時代感覚でコンパイルし、成功したレーベル。その消えかかった息吹、のようなものをアンドリュー・シリルの新譜に感じたからだ。そして、後からCreditを確認し、溜息とともに光を感じた、のだ。

過剰な残響を加えず、ECMとしての音の冷たい温度感を保ている。米録音とは思えない(昔もそうだ)。意識のなかに深く沈殿するECMの音世界が実に素直に再現されている。

このアルバムは実質的にはフリーゼルのアルバムかな、と思う。シリルは淡い打音を背景に散りばめている。少しオフ気味のシリルの音が美しくアルバム全体と調和している。隅々まで過剰な音が排除されていて、緩く差し込まれるダヴィ・ビレージェスのピアノも粒だって美しい。ベン・ストリートも木の胴体の共鳴音が軽く響く感じ、が実に心地よい。快感指数が実に高いアルバム。

元来、過剰な音に魅力を感じさせたフリーゼルだけど、ようやく彼の疎な音にも惹かれるようになってきた、気がする。

The News

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