K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Red Mitchell, 鈴木勲 :Bass club (1979) やはりこのアルバム(追悼なんかしない)

Red Mitchell, 鈴木勲: Bass Club (1979, Paddle Wheel)
GP-3220
    A1. Opening Of Bass Club
    A2. Perdido
    A3. Polka Dots And Moonbeams
    A4. Embraceable You
    B1. Yesterdays
    B2. Alone Together
    B3. Blues In The Closet
    B4. Closing Of Bass Club
Red Mitchell(b),鈴木勲(ピッコロベース),山本剛(p).
Engineer [Assistant] : Takao Suga
Engineer [Mastering] : Shogo Sakamaki
Engineer [Recording & Mixing]:Hatsuro Takanami
Music Director :Jiro Kohno
Producer: Motohiko Takawa
Recorded Aug. 21 & 22, 1979 at King Records Studio #2 Tokyo
-------------------------------------------------------------------

鈴木勲が亡くなった。「死ぬ」という生物的必然を感じさせない存在、と感じたのは、その前段階である「老い」とも無縁であったからではないか。だから追悼なんかしない。いつ聴いても「今日の音」を聴かせてくれることは間違いないから。

その音楽も「鈴木勲の音である」以上の定義は無理で、かろうじてジャズと呼ぶのが何とか座りの良い表現かな、という感じ。怪作「自画像」なんかは、そんな理解を超えていたし。

 

ボクのなかで、一番好きな鈴木勲のアルバムはレッド・ミッチェルとの共演盤。ここがスタート。伝統的な4ビートのフォームで、同業の大先達のレッド・ミッチェル相手に鈴木勲の音を炸裂させているのだから、只事ではない、と思うのだ。

 

[2020-10-15] このアルバムを契機に

イコライザアンプを変えての愛聴盤動員が続く。このレコードは発売当時の愛聴盤。よく思い出せないが、植松孝夫のFMでのライヴとこのアルバムを契機に日本のジャズへの関心が高まったのではないか。

2大ベースが全面に出て競っている。鈴木勲が唄って、レッド・ミッチェルが唸る。そこに山本剛が合いの手を入れる。ここでの山本剛は「添え物」で録音はオフ気味だけど、それが良い。その控えめのコロコロに惹かれたのだろうな。その後にTBMのMistyを良く聴いたことを思い出した。鈴木勲もTBMのBlue cityとか。

好きな録音の一枚であったが、今になって聴くと、やはり日本のレコード固有の「柔らかみ」が強いような気がする。少しイコライザでRIAAを外れ、Turn overを高めると、その印象は弱まる。これってなんだろうな。日本のレコードの材質説もあるがどうだろうか?

[2010-05-01] 

来日したRed Mitchellがベース,鈴木勲がピッコロベースを引き,バックに徹した山本剛がピアノを弾いている日本制作盤.僕はリアルタイムにLPレコードで聴いて気に入って,以来30年,ターンテーブルに高頻度で乗っかっている.とにかく理屈無用に楽しい一枚.アルバムタイトルは当時存在したジャズのベース奏者クラブだそうで(ライナーノート読んでふーんと思ったが,ホンマかいな).当時のキングレコードの国内制作盤は素敵な録音が多くて愛聴盤が多い.あのジョージ川口のただひとつの一枚もPaddle Wheel.よくうたっているベースが堪能できる.また山本 剛のピアノもコロコロと小気味良く楽しい.

70年代に何となく日本ジャズという,米ジャズから程よい距離をとったジャンルができたような感覚がある.山下洋輔,菊地雅章,日野皓正とともに,鈴木勲や山本剛もほんとうに気持ちに染みるような日本ジャズだなあ,という聴こえ方がする.僕は鈴木勲では,有名なBlue cityやBlow upも勿論好きだが,少人数の録音もとても好きだ.富樫雅彦との”陽光”,菅野邦彦との”Sincerely yours”とか,全てキングレコードのPaddle Wheelレーベル.当時,East Windレーベルは終息,TBMレーベルは一服していたから,一番楽しいレーベルじゃなかったかな.

レコード屋(と云わないかな?)で鈴木勲の盤を久方ぶりに手にしたのは,やっぱりデュオ.相方は,かつて梅津和時と生活向上委員会(略して”せいこうい”,僕の学校にもきました)を演ってた原田依幸(ピアノ).村上春樹はあまり悪口を本に書かないヒトなんだけど,原稿流出の安原顕よりトーンは1万倍くらい低いが,「六本木で原田依幸に絡まれた」と書いてあるのを読んで,笑った.僕は原田依幸のピアノの切れ味が好きで梅津とのドイツでのライブは大名演と思っている.だから手にしたのだ.

鈴木勲,原田依幸 ”6日のあやめ”
off note record 1995年のライブ録音

モノクロームのジャケットが何となく日本,それも中央線沿線.一見(一聴?),静かなピアノとベースの応酬は期待を裏切らず,深いインプロビゼーションの世界に入っていくプロトコルにぞくぞくしたのだった.

最後に鈴木勲の「怪盤」として知る人ぞ知る「自画像」.これもPaddle Wheel.ベースで淡々とソロ,なんて枯れた演奏ではない.20種類以上の楽器を繰って多重録音.歌までうたう.入手して聴いて唖然としてお蔵入り,だったのは所謂ジャズの範疇を大きく逸脱していたから.あれあれ,おやまあ,という感じだった.最近,再び聴いてみたら違和感はあまりなくて,Eberhard Weberとかベーシストの方々が紡ぐ夢の音の形だったのだなあ,と30年経て気がついたのだった.

鈴木勲: 自画像
1981年録音,Paddle Wheel