K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

6年目の金沢、に気がつく


 5年前の8月のお仕舞方に金沢に来た。だから6年目に入った、ということを数日過ぎてから気がついた。

 空や月の大きさに驚いたり、水気を孕んだ風を心地よいと思ったり、夕暮れや明け方の色彩の階梯に惹かれたり、狭い路地や坂を彷徨ってみたり、したことすら遠い過去のように思える。

 ただ何よりも時間がゆっくりと過ぎて行くこと、を味わい尽くしたような最初の1年の奇妙な感覚だけは忘れ難い。何処に居るのか、そして何処に連れて行かれるのか、そんなことが分からなくなる、座標を失うような日々。

 そんな、はじめて土地に住む愉しみのようなものが陽炎となって、ふっと消えてしまったような気がする。だから、そんな気分を未だ求めているようなことがあって、知らない河岸で糸を垂れたり、30cmの円盤から流れ出す音に浸かったり、兎角、日常の気分を麻痺させるようなことを求めているような気がする。

 薄暗い明け方に目覚める年頃になって、所在の無さに戸惑いながら、茜色の空を眺めているのも悪くない、と思った。