K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

ECM2400番台

(ECM 2433) David Torn: Only Sky (2014) 意識と無意識の境界にあるような時間に

ギターとウードのソロ。全編、環境音楽的な浮遊する世界であるが、そのなかで弦の歪みのようなものが造る「変調」のようなものに惹かれる。フリーキーな音、インプロ的な無調を、音空間に閉じ込め、音響的な処理でECM的な印象そのものに。それも本来的な好み…

(ECM 2494/95) Roscoe Mitchell: Bells For The South Side (2015) 精緻な音の空間

ボクはAEOC関連のアルバムについては、ブリジット・フォンテーヌでしか聴いていなくて、極めて縁が薄い。だから、このアルバムが彼らの過去の業績に照らしそうか、なんてことは書けない。むしろ、ソーリーとかテイボーンとかの参加が気になっていた。 AEOCに…

(ECM2473) Meredith Monk: On Behalf Of Nature (2015) 幾たびも幾たびも同じ手で騙されると知っていても

つい手が出てしまうなあ。 聴くと、悪く云うとマンネリ、聴いたことがあるヴォイスや打楽器やピアノが流れる。だけど、その音世界は懐かしくも手が届かず、追いかけても消えてしまうような、儚い蜃気楼のような、ありもしなかった過去を覗いているような感覚…

(ECM2401) Elina Duni: Dallëndyshe (2014) 綺麗に再構築された彼女の故国の音楽

今年の来日でその存在を知った亡命アルバニア人の歌い手と、そのアルバム。 アルバニアはオスマン帝国治下であった影響で元来イスラム教徒が過半の国であったが、第2次大戦後は孤立した社会主義政権に。ソ連にも叛旗を翻した毛沢東主義の国でった記憶がまだ…

(ECM2474) Ches Smith: The Bell (2015) 現代音楽的な音響とジャズ的な躍動が交叉するような驚き

実は秋頃からとても忙しい。金沢では、引き籠もりながら、山に登ったり、走ったり、釣りをしたり、音楽を聴いたり、そんな生活のために来た筈なのだけど、どうも違ってきた。まずい。忙しくして年収が増える訳でもないので、なおのこと困る。どうしたものだ…

(ECM2464) Nik Bärtsch's Mobile: Continuum (2015) ライヒへの強いrespect

音響装置に灯を入れて、1時間ほどで音が拓きはじめる。音響空間のなかで、楽器や奏者の定位が定まる。そこで明瞭に知ったのは、ライヒ の「18人の音楽家のための音楽」からのエコーのようなもの。打楽器が打ち続けるタイミング、バス・クラリネットが演じる…

(ECM 2488) Jack DeJohnette: In Movement (2015)  レコードでも聴く・米国録音のほうが

実はこの数週間で何枚かECMの新譜を入手し、気に入って聴いているのだけど、文章にしようという気になれない。何故だろうか。 1970年代初頭の日本のジャズ、特にアヴァンギャルドの系統を聴いていると、熱気、毒気に溢れていて、どこか人の調性を狂わせるも…

(ECM 2482) Avishai Cohen: Into The Silence (2015) レコードで聴くとビミューな

[2016-11-21追記] レコードで聴いてみる。当然の如く重厚になるのだけど、音がもっさりした印象。MP3のスカスカした音でクルマで聴いたときのような「スムース感」を失っている。残響がしっかり再生され、それがしっかり作用している、ように思える。レコー…

(ECM2465) Tord Gustavsen: What Was Said (2015) 雨降りの朝はレコード

雨降りの朝はレコードを聴いている。まとめ買い(送料節約のため)で入手した1枚。半分くらいは未聴。これも、未聴の1枚。冷え切った音響装置がゆっくり暖まるにつれ、音が広がりだす様子が手に取るように分かる。エレクトロニクスや打楽器で彩られた声や…

(ECM2430) Andrew Cyrille: The Declaration Of Musical Independence (2014) 今、を生きるシリル

寒かった東北の出張から、暖かい金沢に帰って、ほっとしている。長旅で疲れているのだけど、帰途、ふっと聴いたアンドリュウ・シリルの新譜の素晴らしさ、に気持ちが一気に開いた。帰宅後、ワインを呑みながら、しっかり聴いている。 何が素晴らしいか、とい…

(ECM2486) Vijay Iyer, Wadada Leo Smith: A Cosmic Rhythm With Each Stroke (2015) 単なる静謐さを超える何か

先月末の給料日に、気になっていたCDをまとめ注文。続々、て云っても4枚だけど届いた。レコード蒐集も一息(ウソ付け)と思ったので。まとまって来たアルバムの音の「均質化」と「角が取れる」残響・イコライズ処理にイラッときたので、昨日の記事。 このア…

(ECM2499) Jakob Bro: Streams (2015) 素晴らしい、と同時に気になったこと

前作を聴いてから約1年、発売早々に入手した。前作と同じく、淡いブロのギターの上を、モーガンのベースが力強く刻んでいく。その刻まれた音が描く弧、のようなものが単純な曲線に見えて、実は細部がフラクタル的な細かな揺動を孕んでいて、実に気持ちが良…

(ECM2487) Carla Bley: Andando El Tiempo (2015) 2年半の時を経たが

(ECM2487) Carla Bley: Andando El Tiempo (2015)1. Sin Fin 10:232. Potación De Guaya 9:503. Camino Al Volver 8:294. Saints Alive! 8:355. Naked Bridges / Diving Brides 10:05Composer: Carla BleyCarla Bley(p), Steve Swallow (b), Andy Sheppard (…

(ECM2421) Ben Monder: Amorphae (2010, 2013) 浮遊なんてもんじゃなくて

ビル・フリーゼルに通じる浮遊、まで書いて、そうではなくて、と思った。 厚い雲が覆うような憂鬱な光景、そして、遠くに見える弱い光、そんなモノートーンの心象を、ギター一本で描き出す描写力に驚いた。 そして、ディストーションを効かせたギターの音が…

(ECM2459) 菊地雅章:Black Orpheus (2012) ある奏者のLast Date

誰もが知っている場所で、だけど誰も見たことがない場所へ行ってしまった、ある奏者のLast Dateを捉えた、ドキュメンタリーである。それだけで、価値はあり、またその内包するcontextは強すぎて、言葉でイイとかワルイとか、そんな戯言を跳ね返してしまう、…

(ECM2460/61) Mette Henriette (2013-14) 今だからこそ

今だからこそ、聴くことができる、アルバムだと思う。昨年10月に発売されたときから気になってはいたが、注文したのはつい先日。勿論、価格のことはあるのだけど、試聴しても注文に至らなかった、のも事実。だから、仕事が一段落して、そして忘れかけていた…

(ECM2428) Gary Peacock: Now This (2014) 走馬燈、というコトバが

12月に入った。今年の*枚、のような記事が見えはじめると、押し迫った感じに、やはり押しつぶされそうな気分になる。年末は苦手、なのだ。 ボクの場合、あまり沢山の新譜を聴いていないので、今年の*枚、は書けないのだけど、メルドーのソロの圧倒的な迫力…

(ECM2470-72) Anthony De Mare: Liaisons: Re-Imagining Sondheim From The Piano(2010-2014)

これはECMのNew series。クラシック、現代音楽のシリーズ。先般のティグラン・ハマシアンのECM作品は、このNew seriesではなかったが、古楽と現代音楽を合わせたような典雅なもので、 New seriesと思わせるような仕上がりだった。このアルバムは明らかにジャ…

(ECM2447) Tigran Hamasyan, Yerevan State Chamber Choir: Luys I Luso (2014) 東方教会のこと

音楽的な話の前に、このアルバムで歌われるアルメニアの宗教曲の背景となる中東のキリスト教について。キリスト教はパレスチナの地に生まれ、その後欧州で広く受容された訳だけど、イスラム教に席巻される前の中東地域にも広く流布しており、その名残は今も…

(ECM2450) Keith Jarrett: Creation (2014) 5月3日のまぼろし

昨年の5月3日、ボクは大阪にいた。そして、まぼろしとなってしまった音、をいつまでも追いかけていた。 このアルバムは昨年行われたキース・ジャレットのソロコンサートの記録。その会場のひとつである大阪フェスティバルホールで、心ない客のため、何回か再…