K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

(ECM 2488) Jack DeJohnette: In Movement (2015)  レコードでも聴く・米国録音のほうが

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 これもレコードで入手。ドラム・ベースはやや引っ込むが、テナーが正面に。その距離感は近い。いや、テナーが近づいた分、リズムが下がったように聴こえただけだ。シンバルが生々しい。静寂の中から、沸き上がる音が感動的なほど生々しい。エレクトロニクスが濃すぎず薄すぎず、空間に流れていく感じが、聴く快感を刺激する。ギャリソンの電気ベースの押しが弱い音がエレクトロニクスと上手くマッチしている。とにかくバランスがいいし、残響が強すぎない。

 最近のECMって米国録音のほうが鮮度が良くないだろうか?

[2016-7-14記事] ラヴィの音

  実はこの数週間で何枚かECMの新譜を入手し、気に入って聴いているのだけど、文章にしようという気になれない。何故だろうか。

 1970年代初頭の日本のジャズ、特にアヴァンギャルドの系統を聴いていると、熱気、毒気に溢れていて、どこか人の調性を狂わせるものがある。寺山修司の映画、それも実験フィルムばかり見ていたら、に通ずるような狂気、の温床のように思える。

 そんな訳で、ボクのなかで多くの音が存在感をなくしているのだけど、そのなかでイケているのは、このジャック・デジョネットの新譜。special edition以来の密度で聴いている。

kanazawajazzdays.hatenablog.com

 まずデジョネットとギャリソン(ジミー・ギャリソンの息子らしい)がつくる音空間は広がりがあって、しかも曲ごとに様々な流れをつくり出していて、飽きさせない。ギャリソンのElectronicsも良い効果をあげていて、日常からの距離をうまくつくっている、デジョネットのドラムも変わらず達者で活気に満ちている。そして美音から爆発的な躍動まで楽しませる。1969年のマイルス・バンドの欧州ツアーで聴かせた、あの非伝統的な激しいビートの力、を未だ見せつける。凄い。

 なによりも良いのはラヴィ・コルトレーン。ボクは彼に偏見があって、1986年頃に昭和記念公園でのアリス・コルトレーン・バンドの演奏での影の薄さ、線の細さが気になって、偉大なママの後ろでコルトレーン「風」のブロウを見せているようにしか見えなかった。だから、以降は全く聴いていない。アリスも含め。

 今回、聴いてみて、その緻密で破綻なく、そして音が大きく広がる様子に驚いた。最近は、マーク・ターナー風の抑制された「うねうね」が流行りで、泣きの咆哮が得意技(好きじゃなかった)のジョウシャ・レッドマンまでうねうね、しているので辟易しはじめていたところ。だから、ラヴィ・コルトレーンの演奏が新鮮にきこえたのだ。

  何よりも、そんな演奏が全く違和感なくECMらしい音場に入っていること、これに感心したのは言うまでもない。

参考記事:

 

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(ECM2488) Jack DeJohnette: In Movement (2015)
1. Alabama (John Coltrane) 6:51
2. In Movement (Jack DeJohnette, Matthew Garrison, Ravi Coltrane) 9:21
3. Two Jimmys (Jack DeJohnette, Matthew Garrison, Ravi Coltrane) 8:14
4. Blue In Green (Bill Evans, Miles Davis) 5:57
5. Serpentine Fire (Maurice White, Reginald Burke, Verdine White) 9:02
6. Lydia (Jack DeJohnette) 4:46
7. Rashied (Jack DeJohnette, Ravi Coltrane) 5:48
8. Soulful Ballad (Jack DeJohnette) 4:22
Jack DeJohnette (ds, p, perc), Ravi Coltrane (ts, ss, sn), Matthew Garrison(b, electronics)
Design: Sascha Kleis
Cover Photo: Woong-Chul An
Liner Photos: Peter Gannushkin
Engineer [Assistant (Recording)]: Akihiro Nishimura
Engineer [Recording]: James A. Farber
Mastered By [Mastering] :Nicolas Baillard
Producer: Manfred Eicher
Released: 06 May 2016
Recorded on October 2015 at Avatar Studios, New York