K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

(ECM1069) Kenny Wheeler: Gnu High (1975) ECMの芯のような

 ボクが感じる、ECMの芯のような、そんなアルバムではなかろうか。それも1970年代の。そして次第に希薄になっていくように感じる米国のジャズの匂い。キースのトリオや、モチアン、ブレイ、キューン、そんな米国の奏者達がECMに活躍の場を得て、ある種の「抑制」のなかで沈黙を想起させる美音を発する、そんな幾種もの音を造る要素が交叉する瞬間に驚きながら聴く。

 このアルバムはホイラーのフリューゲルホーンの一音めでもう持って行かれる。実はそのあとの細かな音は記憶に残っていない。ただ奏者達の美音に満たされる流れの美しさにただただ浸る、そんな感じ。米国録音、欧州mixのECMらしく、欧州録音よりやや濁ったような音場(そのように感じる、米国のパワー溢れる音をイコライズしたような)なのだけど、そんなことは問題にならないくらい、美しい音が響く。

  それにしても1060番台のECMの密度は素晴らしい、やはり、ECMの基本的な要素を揃えながら最初の頂点に達した、と思う。

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 [2011-07-23 記事]  Kenny Wheeler: Gnu High (1975) まだまだECMが気になって


  今日もECMのアルバムを聴いている。まだまだECMが気になっているのだ。

  イギリスのトランペッター・ケニー・ホイラーのアルバム。ここでは共演者としてキース・ジャレットがピアノを弾いている。だから手にした、という人が多いのではないだろうか。ボクもそんな一人だけど。それまでケニー・ホイラーを聴いたことがなかった。はじめて聴いた彼のラッパの音の美しさ、ECMらしい透明度の高い音には驚いたのだけど。そして、ある種のジャズとして、ある高みに存在する音に仕上がっている。そしてキース・ジャレットの音の美しさ。デジョネットのシンバルワークの細やかさもきれいに響いている。
  
 この30年ばかり、もうキースが客演している録音はないと思うのだけど、どうだろうか。ディスコグラフィーを確認しみたが、ほんの一部のクラシック以外ではなかった(弟のスコット・ジャレットのアルバムへの客演はともかく)。だから1970年代後半、ECMGnu HighやTales of another (Gary Peacock)が、最後の客演アルバムのようだ。

  Gnu Highを聴いていつも思うことは、抑制がきいたキース・ジャレットのピアノの美しさ。エキセントリックな逸脱はなく、彼のどのリーダ作よりも、よりリリカルな側面が強く出ていると思う。だから聴いていて楽しいし、音のひとつひとつに触れることが楽しい。
  
  前も書いたけど、70年代のキース・ジャレットのアトランティックのアルバム群はキースの気侭な音になっている。アルバムが玉石混合。ときとして光る玉をみつけて部分部分で楽しむ聴き方、しかできない。George Avakian(結構有名なjazz producer, wikiによるとKeithのmanagerを最後に1974年に引退したようだ。92歳で存命!)のもとでのアルバムは聴くに耐えない部分が多い。Impulse!でのアメリカン・カルテットと称するグループの録音もそう。だからECMのEicherプロデュースの価値が如何に大きいかが分かる。演奏者との協調、以上の何かを与えて、時として強制させているのだろう。そのような枠のもとでの抑制が強いほど、キース・ジャレットは光るように思えてならない。だからこそ、抑制の度合いが大きい、共演者としてのアルバム参加はしなくなったのだろう。

  それにしても、このリズムセクションは、この録音の数年前のマイルス・デイヴィス・バンドの主要奏者達。電化バンドでファンクをやっていたのだ。何とも面白い。気心が知れたメンバーでの気軽なプレイなんだろう。だからこそ、マイルスと全く異なる、まっすぐに美しいホイラーのトーンに寄り添うプレイをきっちり「こなした」のだと思う。

youtu.be

 

参考記事:

 


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[ECM1069] Kenny Wheeler: Gnu High (1975)
A. Heyoke(Kenny Wheeler) 21:47
B1. Smatter(Kenny Wheeler) 5:56
B2. Gnu Suite(Kenny Wheeler) 12:47
Kenny Wheeler(flh), Keith Jarrett(p), Dave Holland (b), Jack DeJohnette(ds)
Layout: B. Wojirsch
Photograph: Tadayuki Naito
Engineer: Tony May
Mixed by Martin Wieland
Producer: Manfred Eicher
Released: 1976
Recorded June 1975, Generation Sound Studios, New York City