何時間か列車に乗るのだから、習慣のように少し本を求めたかっただけだ。
入線まで一時間はあったから本が欲しい、そんな懐かしい気持ちになって、切符を求めた後、改札前の大きな通路をうろついてみた。大概は文庫本と新書を少し置いた売店があるのだけど、と思ったから。
様々な食べ物屋はあるのだが、ささやかな本の売店なんかは見当たらなかった。そういえばキオスクにも、週刊誌は見当たらない。そんな時代なのだろうか。
結局、駅の北側に上物のように乗せられたビルディングの上階まで登る羽目に。蔦屋しかない。
昔ながらの書店が好きなのだけど、と思いながらも、背表紙に引っ張られる。久しぶりのリアルな本屋。
なんとなくこんな本。知っている昭和戦後の小説家達も、谷崎潤一郎や佐藤春夫らとともに、近代文学のコーナーに移動しているのを知って、驚いた。もうジジイだな。
小学館から、昔の小説が簡易な装丁、単行本並みの大きな字、手頃な価格で出版。電子化に違和感を感じる身には、嬉しい出版と思うが、皆、どうなのだろうか。
あとは島尾伸三の敏雄、ミホ話。伸三の変わらぬ語り口にやられる。
そして江戸川乱歩の怪談集、時節モノなんで。