K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

金澤・浅野川河畔から卯辰山散歩:素知らぬふりをしてみたいのだけど


昨日も書いたことなのだけど、気持ちを大きく開いて、風や雲や花や光や水や、そんなものたち全てを受け入れ不用意に交感してしまうと、気持ちを持って行かれてしまうような気がしている。だから、櫻にも素知らぬふりをしてみたいのだけど、横目でみるような感じで結局のところ「少しだけ」気持ちが入ったかなあ、という日々。金澤は未だ朝夕の冷え込みが強く、櫻が随分長持ちするのである。だから「少しだけ」にしておかないと、櫻が散ってしまう頃には疲れ果てるのだよね。それが昨年の反省。

あの日曜日は朝から雪のなかに遊んで、雪面からの照り返しにすっかり焼けて,赤ら顔になってしまった。呑む前から呑んだような顔をして、浅野川方面に出かけた。主計町あたりは丁度盛りで、柔らかなひかりのもとで揺れていた。

主計町から観音坂の通りを歩いて宇多須神社へ。茶屋街の奥の辻を曲がってお宮の前に出たら一陣の風。ふわっと櫻吹雪を頂いた。気持ちがいい。この宇多須神社の前に何かしら結界のようなものがあって、神域にはいったら、奥社のあたりまで少し違った空気を感じる、と少なからず云うヒトがいて面白い。ときとしてボクも感じる。

ボクの中ではお決まりのように宇多須の奥社から卯辰山にはいっていく。どんどん空気が緩んでいくような感じ。しばし奥社の独特な雰囲気のなかで過ごしたあとに櫻がある谷合の場所に出かけた。

 

卯辰山の道路にはクルマが溢れていて興を削ぐのだけど、少し場所を変えるとヒトもそれほど多くない場所もある。目的地は若い櫻が多い谷合の場所。翳りが強い場所で、淡い櫻が暗い蒼色の空とよく馴染んでいる。若い櫻の枝が空を覆っているような感じで、寝っ転がって空をみていると、鳥が飛び交い、枝が揺れる。

薄暗い谷間に風が吹き、酒を呑んでいても少し寒かった。櫻木がつくる文様は天蓋を覆う葉脈のよう。ひとつ・ひとつの脈に暗い血流が流れ、その先に淡い櫻花が吹き出したように散りばめられている。酔って眺めていたら、このフラクタル的な文様が硝子でできた天蓋の亀裂のようにも見えて、いつまでも寝っ転がっていたいような気分だった。

ここは谷合ので寒い場所だから、今週末も綺麗に咲いているだろうな、と思うと、素知らぬふりもしてられない気持ちになってくるのだ。困ったなあ。