K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

ハノイ・バンコク・金沢・イスタンブール:彷徨うような日々


  長いフライト、ほぼ半日、を終えてアタチュルク国際空港に着いた。もうすぐ陽が沈む頃。ターミナルを出て、見上げると「パリまで2358km」の標識。地勢的・意識的な意味での欧州の東端に来た実感が溢れ出た。イスタンブールはアジアが欧州を浸食した最後の橋頭堡なのだ。欧州の地殻のうえに広がるアジア。かつて自壊した古代ローマ帝国の嫡男たるビザンチン帝国の首都であり、蒙古高原の原住地から1000年かけて西遷したトルコ族の西の果て。west end。

  先週はハノイからバンコクに出かけた。そして金沢に僅かな時間戻った。満月にやや足りない夜、あたらしい荷物を作ったり、少しビールを呑んだりする時間が楽しかった。ボクのなかでは、ハノイバンコク・金沢が自然に並ぶのだ。微かに甘い香りが漂う街々。そして、踵を返してイスタンブールにたどり着いた。彷徨うような日々が続く。

  空港でバスに乗り込み宿がある新市街・タキシムに向かう。エーゲ海の北端につながるマルマラ海沿いに東を向いてバスは進む。20年前に来たときから変わらずビザンチンの城壁の遺構がみえる。そしてバスは北に向きを変えて、ローマ時代の水道橋をくぐる。そして金角湾をわたる。夕刻の金角湾、まさに黄金色に染まろうとする時間だった。

振り返ると、旧市街の丘のうえに壮麗なスレイマニィ・ジャミィ。再びこの街にやってきた実感が溢れてくる。

 そんな路順でタキシムに着いたのだけど、久々のボクには丁度良い喧噪。旧市街に宿を取らなかったことを後悔したのだけど、良かった。ホテルはタキシムの丘のうえ。ボスポラス海峡を見下ろす場所。部屋に入ったとき、息を呑んだ。

  金沢が綺麗な満月だと聴いて、少しだけ寂しい気持ちでいた。食事をして呑んで帰った夜​半前、部屋から外をみたら大きな月が煌煌と海峡を照らしていた。音もしない。月光に照らされる海面がはっきりと見える。カメラでは写らないのだけど、アジアと欧州を薄く剥がす切断面が浮かび上がっていた。

その向こう​には日本の協力で建設された欧州とアジアをつなぐ大橋が​見えている。そんな無音だけど賑やかな光景、少しマジカルな色合いの景色をみながら夜は更けていった。