K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

サイゴンの夜


 ボクから上の世代はホーチミンといえば、北ベトナムの指導者。ホーチミン市を思うことはない。やはり、サイゴンである。ヴェトナム戦争の遠い記憶の中にある。遠い、というのは、時間であり、そして日本からの距離。米国と戦う悲惨さ、を知っていた日本人が、日本の中心となっていた時代。だからこそ、イデオロギーから離れ、気持を痛めたり、彼らの闘志に驚嘆していた人達が多かったのではないか。

 日没の頃、成田を飛び立ち、日本では日付が変わる頃にサイゴンに降り立った。はじめての街の深夜なので、ホテルにピックアップを頼んでおいた。金はかかるが仕方がない。僅か2日の滞在。仕事だから、これも仕方がない。空港から送迎車で市中に向かうと、お馴染みの単車の群。すっかり嬉しくなった。

 

 ヴェトナムは未だ労働党こと共産党の独裁。あの「星の旗」が流れるのを見ると、微かに「あの時分」を思い出す。この労働党の施設の近所のホテルに入った。創業はサイゴン解放後で新しいのだけど、建物はフランス時代のコロニアルスタイル。予想通り、甘い退廃した空気の残り香のようなものが漂う。

  

冷凍保存された安南の記憶。そこには暑気のかけらも無く、冷たい空気を流していた。

 ホテル周辺は殆どclosedで、仕方なくホテルのバー。サイゴン・ビール一杯500円で日本価格。昨年行ったダナンの海沿いのバーは100円だったのだけど。

 それにしても11月の印度支那は極楽。摂氏26度の乾いた風に吹かれながら呑むビールは旨い。これを味わうために、この季節に来ているとも云える。