K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

(ECM1064/1065) Keith Jarrett: Köln Concert

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(ECM1064/65) Keith Jarrett: The Köln Concert
A. Köln, January 24, 1975 Part I 26:15
B. Köln, January 24, 1975 Part II a 15:00
C. Köln, January 24, 1975 Part II b 19:19
D. Köln, January 24, 1975 Part II c 6:59
Keith Jarrett(p)
Cover Design: B&B Wojirsch
Photograph: Wolfgang Frankenstein
Engineer: Martin Wieland
Producer: Manfred Eicher
Recorded live at the opera in Köln, Germany, January 24, 1975.

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[2019-10-28] amazon music追加、体裁修正

[2010-09-04] ケルンコンサートはボクがはじめて買ったジャズのLPレコード

Köln Concert はボクがはじめて買ったジャズのLPレコード。忘れもしない1979年6月に京都河原町の駸々堂(もうないよね)の隣りの清水レコード(だったかなあ,これもない)。三条の十字屋で売り切れだったから、仕方なく日本盤。梅雨の中だったな。

爾来31年以上ジャズを聴いているのだから馬鹿みたいに変わっていない自分に驚いてしまう。Köln Concert を聴いていると、いつでも、あのときの気持ちを想い出すことができる。とても不安定な気持ちの中で、独りで生きることを一生懸命掴もうとした日々。
だから「好き」とか「嫌い」のような話の枠外の演奏なのだけど、最近、真空管アンプ+MCカートリッジで固めたセットで聴こえてきた音は、30年の間、無条件に受け入れていた気持ちに微妙な隙間を与えた。少し、このあたりを書いてみたい。

まず31年前の大学生は何故、Köln Concertに惹かれたのだろうか。はじめて傾注した音楽はジャズなので、それ以外の音の素養はない。最初の一音から、夕暮れのなか独りで寂寥感を噛みしめるような心象のなかに置かれる。そのあと懐かしいようなメロディの断片が途切れることなく繋がっていく。一音一音の響きが他のジャズピアニストと比べ,圧倒的に嘆美的であり感傷的なのだ。寂寥感・孤独感を美しく称えるような音宇宙に引きこもる快感のような気がする。

そして、改めて聴いてみた昨日の話。31年間ジャズをたっぷり聴いて、最近はクラシックのピアノ、ホロヴィッツやミケランジェリらの強烈な美的音世界を知った後:
(1)真空管アンプ+MCカートリッジで聴いたKöln Concertの音は、ピアノの共鳴音、ホールの残響音を含め、酔ってしまう程、美麗な音になった。さすがECMの音。だから、ある種の感銘を強く受けることには、全く変化はなかった。いや、31年前よりも強まっている部分もある。
(2)同時にとても気になったことがある。演奏意図として、クラシックのピアノと同じような美しい音を狙っていると強く感じた。メロディやリズムじゃなくて鳴らし方。しかるに鳴らし切る一歩手前の残念・無念の感覚がボクのなかに出てしまった。勿論、並のジャズピアニストの話ではないのだが。だけど、隣の土俵の基準軸は厳しい、のだ。
(3)美しく、そこはかとないノスタルジイを喚起しつづける即興のメロディの連鎖なのだけど、何とはない鎖と鎖のあいだの「ぎこちなさ」。これも隣の土俵基準。そりゃ即興だから仕方がない、かも知れないが、即興か作曲かは演奏家の事情であって、聴き手にとって、それは意味がないのではないか。どことなく、音の「字余り感」が耳についてしまった。
(4)だから昔ながらに酔う部分と、醒める部分が共存するような、ヘンな気持ちになったのだ。

そのような感覚からすると、後年のThe Melody At Night, With You(1999)あるいはCarnegie Hall Concert(2005)のアンコール曲のような穏やかであるが、「字余りのない」しっかりしたソロの魅力を感じてしまう最近なのである。とは云え、やっぱりKöln Concertの気持ち良さは、それはそれでいいかなあ、といういい加減なことを書いてしまったり、するのだけど。

 

The Koln Concert

The Koln Concert