K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

金沢・梅雨の候を過ごすなかで(野田山の紫陽花のことや,冷たい風が吹く場所のこと)


野田山は夏のひかりのもと,百合の野生がとても似つかわしい

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この金沢の地に住み日は未だ浅いのだが,この地に住みたかった長い年月や,住み始めてからの数ヶ月を思い起こすと,もう随分とこの地に耽溺しているような不思議な感覚になる.そして自らやってきたのか,ナニかに招かれたのか,ただ流れてきたのか分からなくなっている.梅雨の候にはいり,その大気の肌合いがとても気持ちよくて,ますますこの地に憑かれたような気持ちになっていて,ただ気持ち良いのか,ナニかが駄目になっているのか,判然としない時間を過ごしている.気をつけないと,吾が御魂が落ちそうになっているような...夕暮れ時に,昔ながらの空気を残す町の食堂に座って,そんな他愛のないことを知人に話しをしながら,呑むビールはとても美味しかった.

ある日,呑みながら金沢の紫陽花の話をした.やはり誰もが印象が薄いようなのだけど,発色が穏やかなのは土壌のせいかな,という曖昧な話の切れ.そんな会話を幾人としたときに聞いた野田山麓の幹線沿いの紫陽花をみてきた.夏のひかりのなかで百合の花の存在感がとても強く,紫陽花は仕舞い方の顔をしていた.だけど,きれいな額紫陽花が気持ちのなかに残った.また来年.

野田山には走って行ったのだが,そのまま涌波から大清水の辰巳用水のほうへ抜けた.何回も走ったり,あるいたりしていると,何故かボクにとても合う場所がなんとなく分かってくるような感じがある.この道すがらで云うと,涌波のあたりの大きな櫻の木が3本あるあたりと,辰巳用水遊歩道の終点にある計量所のあたり.あと,帰りの長良坂のお地蔵さんのあたり.涌波の櫻の木のあたりは何も遮るものがなくとても暑い場所なのだけど,なにか惹かれるモノがあって立ち止まると,冷たい風が吹いてくるのだ.計量所のあたりもそう.だから走っていても,必ずその場所では立ち止まってゆっくり時間を過ごすことにしている.

長良坂もそう.風が吹くし,お香の匂いが流れてくる.ある時はにぎやかしいモノの歓迎も受けた.辰巳用水遊歩道の帰りは,小立野から亀坂を下って帰ったのだけど,寺町大地への登りは長良坂.お地蔵様に手をあわせていると,風が吹き,木々が揺れる.目の前にストンと木の葉が落ちてきた.なんか投げられたような気持ちになったので持って帰った.

ただそれだけの話なのだけど,そうやって好きな土地との交感を繰り返すような日々を過ごすことを,「憑かれている」と云うのかどうか,町の食堂で他愛のないことを喋りながら呑みながら,ぼおっと考えていたのだ.


野田山の紫陽花.


涌波の櫻の木と辰巳用水遊歩道の終点あたり


長良坂から頂いた木の葉は一晩経つと乾いていた.