K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Michel Petrucciani, Ron McClure: Cold Blues (1985) 何回も何回も

Michel Petrucciani, Ron McClure: Cold Blues (1985, Owl Records)
A1. Beautiful, But Why ? (Michel Petrucciani) 8:33
A2. Autumn Leaves (Jacques Prévert, Joseph Kosma)5:40
A3. Something Like This (Ron McClure) 6:15
B1. There Will Never Be Another You (Harry M. Woods) 6:52
B2. I Just Say Hello ! (Michel Petrucciani) 8:42
B3. Cold Blues (Michel Petrucciani) 6:35
Michel Petrucciani(p), Ron McClure(b)
Recorded by A.T. Michael MacDonald
Edited by David Baker
Lacquer Cut by Christian Orsini
Producer: Jean-Jacques Pussiau
Recorded at The Classic Sound Studio, New York, January 11, 1985.

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何回も何回も聴いている。昨夏に管球式フォノ・イコライザを入手してから、音がますます甘露になっている。そして音の透明度が増し、覗き込んでも深淵のようで暗い。ジャケットの漆黒と対のようだ。

フランスの奏者2人だけど、録音はニューヨーク。デヴィッド・ベイカーのCreditで気がついた。それから録音情報を探して追加。彼が関わった録音らしく、音の輪郭がとてもしっかりしている。だけど彼の録音による米盤との違いは、心地よいピアノの甘さ。フランスでのカッティングか、プレスか、そこはかとなく欧州盤の音の愉しさにヤラれる。

結局、沢山レコードを買っているけど、好きなアルバムが何枚かだけあれば良い、と思う瞬間があるのは、これを聴いているときだ。はじめて聴いた20代後半のときと、全く変わらぬ心象が広がることが嬉しい。だから、そんなレコードはそんなに多くないのだ。


[2019-04-29]

GWに入って、買って聴いていなかったレコードの整理をしている。どれも音がおかしく聴こえる。疲労、起きがけ、風邪、そんなことで美しく聴こえたり歪んだり。イヤになる。ああ、またそんなコトかなあと思っていたが、そっとボクの基準となるレコードを出してみる。ペトルチアーニのCold Blues。

これはCDプレイヤーを入手する(ゆっくりで1988年)前に、ほぼ最後に買ったレコードじゃなかったかな。もう何回も何回も聴いたアルバムで、しっかり全てが記憶できているように思う。

この頃から仕事が急激に重くなり、そして面白くなり、CDやレコードの探索は20年くらい緩くなるのだけど、ペトルチアーニだけは聴いていたなあ。同世代で同時代の奏者である、という微かな気持ちもあった。だから亡くなったときは残念だったな。フランスの奏者で、華美なピアノに欧州の香りを感じさせるように思っていたのだけど、骨太なジャズの芯のようなものも感じられて楽しい。

ロン・マクレーのベースの音がやや気になるのは、1970年代の電気増幅音っぽいところかなあ。SteepleChaseのペデルセンとか、好きなこの時代のジャズで気にくわないのは、このあたりだ。ボクのreferenceレコードなのだけど。

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[2014-09-05記事] 冷たい風が流れる朝に

 夏がいつの間にか終わってほっとした。苦手。やはり季節が変わると、聴きたい音楽の嗜好も変わる。 気になって入手していたアルバムの多くが、何となくシックリこなくて聴けていない。夏、に聴きたい音がとても少ないのだ。

 今朝、冷たい風が流れる朝に、試しにペトルチアーニのアルバムをターン・テーブルに載せてみた。驚くほど、すっと体に入ってきた。細胞の組成が変わったのかな、と思えるほど。

 このアルバムは若きペトルチアーニとマクレーのデュオ。ロン・マクレーって、ロイド・ジャレットのコンボとか、時折、有名なセッションに入っているヒトだけど、地味に支える印象。だけど、このアルバムでは品良く唄うベースが素晴らしい。とかく過剰になりがちなペトルチアーニから、疎な美音を引き出すような瞬間があって、はっとさせられる。全般的に早い演奏が多いが、そんな会話の妙が楽しめ、そして美音の記憶しか残していかない。

 いつも音を聴いているのだけど、その日、その日で好みが揺らいでいて、自分が満足するレコードを取り出すことに呻吟している。だけど「秋の傾向と対策」は何となくわかっているので、謎めいた夏が終わるとほっとするのだ。夏が終わるのが残念ってヒトの話を聴きながら、いつも嬉しくなってくるのが今時分の心象風景、のように思える。

Cold Blues

Cold Blues

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