K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Michel Petrucciani: Oracle's Destiny((1982) カルフォルニアのフランス人の音

 昨年観た映画のひとつにペトルチアーニの「情熱のピアニズム」がある。ドキュメンタリーとしてはまずまずで、何よりもロイドとの出会い、カルフォルニアでのギグの様子の映像が嬉しかった。あとはまあ、女性遍歴、の話なので、そんなことは、どうでも良かったのだけど。音を聴く、という行為に過度のcontextは不要だと思っているので。

 ボクはフランスOWLから出ているアルバムは好きで、OWLのレーベル・カラー(ECMよりは優しく暖かく、Sreeplechaseほどはジャズ臭は強くなく、フランスのカフェで聴くような気楽さ)と相まって、ペトルチアーニのピアノの在り方とぴったりのように思える。そんな訳で、ここ数年でOWLの6枚のうち、Estate以外はレコードで手には入って、にんまりしている。これは、その1枚。ソロアルバム。

 このアルバムのジャケットは楽しい。(多分)ペトルチアーニが隠遁していたロイド宅へ出かけた時分の録音で、彼がカルフォルニアのビッグ・サーから送ってきた「音の手紙」、それが本盤のようなのだ。開いた封筒のなかから、鳥の声、柑橘類の香り、Palm Treeの影、とともにピアノの響きが届けられている。10月のパリで録音されたアルバムなのだけど、カルフォルニアの余韻が彼のなかで残っているのだろう。

 パリのアメリカ人、ってのは聞くけど、カルフォルニアのフランス人の音、ってこんなイメエジなのか。乾いていて、冬でも暖かい。ヒトの暖かさのようなものが、静かに伝わる。ECMの音とは随分と違うのだけど、気持の中に小さな灯がついたような暖かさ。

 そんなことを書いていたら、仕事のパロ・アルトで、フランス人と良く一緒になったなあと関係ないことを思い出した。遠く、儚いカルフォルニアの余韻。そして、ペトルチアーニもとっくに彼方へ消えてしまった。

 

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Michel Petrucciani: Oracle's Destiny(1982, OWL)
   A1. Oracle's Destiny
   A2. Medley: Big Sur/Big On
   A3. Amalgame
   B1. It's What I Am Doing When I Miss You
   B2. Mike Pee
Michel Petrucciani(p)