先日のソロがとてもよくて、随分前に冷めた筈のハーシュ熱が少しだけぶり返した。すぐハマルのだから。そんな訳で、ハーシュをレコードで聴きたくなって、古いアルバムを若干手配した。これは、そのうちの1枚。1986年の録音で2枚目のリーダ作。LPレコードからCDに切り替わる時期のアルバム。フランス盤だ。
まず音なのだけど、レコードらしい柔らかい音。特に高音でのハーシュのピアノのてかり、のような響きは素晴らしく十分満足した。昨日届いてから何回か聴いた。綺麗だなあ、と思う。
演奏なのだけど、勿論、ヘイデンとハーシュの絡み、に何かを期待して入手した訳なのだけど、この点では期待外れ。ヘイデンは実に手堅い演奏で、全体として、とても普通なピアノ・トリオなのだ。だから逆に驚いたのだけど。録音のバランスも、ハーシュに焦点が当たっていて、ヘイデンは抑え気味。そのような意図のアルバム。案外良かったのは、バロンのドラム。やはり抑え気味のブラシがとても心地よく、上質のピアノ・トリオになっている。
このアルバムでのハーシュは、ピアノを美しく鳴らす、という点では素晴らしい。それ以上の感じたのは、ハーシュは進化を続けている、という事実。このアルバムでの左手の感じ、とかが、昔からのピアノ奏者の延長線上のようにもきこえるし、またソロの途中で微妙にブレークしている箇所もあり、やれやれ、と思う瞬間もある。今のアルバムのように、清冽な水の流れのように、煌めきながら流れていくような豊かな感じ、ではない。綺麗に鳴らすピアノ奏者、という範疇に過ぎない、と思う。
それでもオーネットの曲(A2)でのヘイデンは期待通りであったし、エヴァンスの曲(B4)での美しさは、単にエヴァンスの後を追いかける奏者じゃないよね、って感じもあって、いいアルバムだなあ、と思った。自作やスタンダード曲も交え、とてもバランスの良い、聴きやすいアルバムなのだ。
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Fred Hersch: Sarabande (1986, SunnySide)
A1. I Have Dreamed (Hammerstein, Rodgers) 5:27
A2. Enfant (Ornette Coleman) 6:27
A3. The Peacocks (Jimmy Rowles) 7:10
A4. What Is The Thing Called Love (Cole Porter) 5:10
B1. Sarabande (Fred Hersch) 5:37
B2. This Heart Of Mine (Arthur Freed, Harry Warren) 5:28
B3. Child's Song (Fred Hersch) 4:30
B4. Blue In Green (Bill Evans, Miles Davis) 4:46
B5. Cadences (Fred Hersch) 5:01
Fred Hersch(p), Charlie Haden(b), Joey Baron(ds)
Recorded at Classic Sound Studio, NYC on December 4 & 5, 1986