K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Lars Muller: Sleeves of Desire (1996) 30年以上前を鳥瞰しているような、不思議な浮遊感とともに

Ecm: Sleeves of Desire : A Cover Story (Edition of Contemporary Music Sleeves of Desire : a Cover Story)

Ecm: Sleeves of Desire : A Cover Story (Edition of Contemporary Music Sleeves of Desire : a Cover Story)

 

 少し長い間、迷ったのだけど、賞与が出たのでSleeves of desireを注文した。ECMのジャケットを扱った書籍。購入したのは中古本だ。数年前に新刊書として購入したWindfall Lightは、このSleeves of desireの続編。

Windfall Light: The Visual Language of ECM: Edition of Contemporary Music

Windfall Light: The Visual Language of ECM: Edition of Contemporary Music

 

いずれの本も巻末にその時点のECMのジャケットが全て掲載されている。本文については、Sleeves of desireはECM1500番台くらいまで、Windfall lightはその後、2000番台くらいまでのジャケットが選ばれ、掲載されている。

その間、ジャケットのデザイナは何人か居るのだけど、音響と同じくジャケットの質感も見事に統一されている、ことがよく分かる。静謐、光と翳、そんな言葉がよく似合う。ジャズ系のレーベルとして空前絶後であることが、改めて認識される。

Windfall lightを入手した7年前から、このSleeves of desireが欲しかった。1500番台までのECMの大半はレコードであり、またリアルタイムにあのジャケットを体験したからだ。キース・ジャレットのEyes of heartやチック・コリア/ゲーリー・バートンのライヴの美しいジャケットが、京都三条の十字屋に並び、4000円弱のアルバムを買おうか、どうしようか迷ったり、また買って帰った後の、あの西独盤特有の柔らかな光沢の盤面にうっとりしたり、そんな記憶の数々。

この本を手に取り、眺めていると、そんな30年以上前を鳥瞰しているような、不思議な浮遊感とともにある。

最近、ECMについては、過剰な音響付加などの化学調味料的な不自然さに引っかかることが多い。それはECM的なモノの量産のなかで、かなりの頻度で「ECMECMたる構造」が形骸化している、ように思えるから。それでも、やはりECMという世界を、同じくらいの頻度で見せてくれるのも事実で、なんとも、なのだ。

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Sleeves of desire(右)はひとまわり小さい。

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日本制作のサン・ベアコンサートのページも。当時のトリオ盤(これがオリジナルか)は高価(確か2万円)で手が出なかった。当時、ECMの国内販売を行っていたトリオのECMでは、盤質、音質ともに、西独盤と比べて、かなり劣るように思う。しかし、このサンベアコンサートだけは別格で、実に丁寧な作りになっている。

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