K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

The Gigi Gryce-Donald Byrd Jazz Laboratory, The Cecil Taylor Quartet: At Newport (1957) ある日、あるバーで

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ある日、あるバーでかかったレコード。日本盤の安レコード。

ジャズ喫茶でもなかなか鳴らないようなレコードが、ほとんどロックかソウルばっかりの自称「ロックバー」でかかった。「**君(ボクの名字)、聴いたことある」とか云って、店主はちょっと得意そうな感じで。普段は「さんづけ」なのだけど、ちょっとそんなときは「君づけ」。

先日、彼の「お別れ会」に行ったとき、飲食店関係者の挨拶で「いらっしゃいませ」って云わない店で驚いた、と云った方が居たけど、それもそうだし、そもそも客でも年下は「君」呼ばわり。何故か年下なのに、ボクには「さん」、希に「君」。まあ、変な店だった。

先日、レコードの一部を買い取りに行ったとき、このレコードを見つけて、妙に懐かしく、その夜を思い出した。1957年のニューポート。A面は未だ健在のフリージャズの帝王(とも云える)セシル・テイラー。B面はジジ・グライスとドナルド・バード

多分、セシル・テイラーなんか持っている筈ないだろう、と思っただろうがエッヘン、という感じでかけてくれたと思う。その昔、油井正一がSJ誌の連載で、各奏者の代表作5枚を挙げる、中にあった。聴きやすい、とか書いてあったことを記憶している。そんな盤をロックバーではじめて聴いたので、素直に驚いてみせた。彼も少し得意そうに喜んでいた。女性客が居ない日は、案外優しかったのだ。

このアルバムでのテイラーは油井大先生が仰せのように、今となっては、ちょっと硬質なモンク、って感じに聴こえる。確かにハードバップからは離れてはいるが、そんなに距離感はない。確かにモンクからテイラーへの流れが見えるような、打鍵のタッチ。楽しい。レイシーも死ぬまで変わらぬあのトーンで、だけどしっかり時代のジャズをやっている。楽しい演奏。

B面のドナルド・バードとジジ・グライスは、研究所を名乗るようなバンドだけど(高柳みたいだ)、内容はハードバップ。ピアノはハンク・ジョーンズでテイラーと裏表、というのが何だが可笑しい。ホーン陣より、ハンク・ジョーンズのキラっと光るピアノが楽しい。

このレコード、なんで彼の所にあったのか知らないが、その後かかったとは到底思えない。ボクぐらいしか聴き手はいなかった筈だから。それ以来じゃなかろうか、針が降りたのは。A面を聴き終えた後、針先には大きな茶色い埃のタマが堪っていた。

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The Gigi Gryce-Donald Byrd Jazz Laboratory & The Cecil Taylor Quartet: At Newport (1957, Verve)
A1. Cecil Taylor Quartet: Johnny Come Lately (Strayhorn) 7:10
A2. Cecil Taylor Quartet: Nona's Blues (Taylor) 7:41
A3. Cecil Taylor Quartet: Tune 2 (Taylor) 10:34
B1. Gigi Gryce-Donald Byrd Jazz Laboratory: Splittin' (Ray's Way) ( Bryant) 8:30
B2. Gigi Gryce-Donald Byrd Jazz Laboratory: Batland (Sears) 7:20
B3. Gigi Gryce-Donald Byrd Jazz Laboratory: Love For Sale (Porter) 7:41
Cecil Taylor Quartet: Cecil Taylor(p), Steve Lacy(ss), Buell Neidlinger (b), Dennis Charles(ds)
Gigi Gryce-Donald Byrd Jazz Laboratory: :Donald Byrd(tp), Gigi Gryce (as), Hank Jones(p), Wendell Marshall (b), Osie Johnson (ds)
Recorded Newport Jazz Festival 1957.

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