K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

セッション:アナクロ的価値観を串刺ししたコメディ


 なんと金沢でやっていることを知り、昨夜の最終回に駆け込み。なんかジャズの映画らしい、ということと、プロモーション映像の狂った感じ、がちょっと印象に残っていたので。久々の映画で、シネモンドの会員券が腐っていた、というか消失して再発行、というオマケ付きだった。入り口の方々、ご面倒をかけました。

 ジャズの映画、って気持ちで見たら、何なのコレ感覚。21世紀の今になってバディ・リッチジョージ川口と言い直してもいい)的ドラムが大活躍の、ドンドカ感満点のビッグ・バンド? まず、狂った音楽教師よりも、狂った音楽的状況の設定に驚いた。ということで、最初からアナクロ的価値観を串刺ししたコメディと思って見てしまった。ということで、荒唐無稽さを存分に味わうことができた。おもしろい。

 チャーリー・パーカージョージョーンズ(パパのほう)の逸話(ボクは知らない)なんかも語られるスポ根ならぬ音楽根性物語の設定が、coolさの対極にあって、そこを楽しむような仕掛け。とっても夢想的な狂気だから、喜劇として見たら、本当に楽しい映画。スティックを持つ手の肉が割れ、血が噴き出す。それを見て、噴き出す観客。それが正しい見方、じゃないだろうか。

 そんな訳で意味もなく力強く、意味もなく早い、ドラムの空っぽな疾走感を存分に楽しみながら、存分に狂った音楽教師と、それを狂って返す学生の狂気合戦喜劇、を存分に楽しんだ。最初から2/3までの異常な高揚感、そのあとの僅かな静寂、再びゆっくり高まりゆく高揚感、まさに最後のキャラヴァンのドラムソロの構成が映画の構成そのもので、楽しい映画だった。

 コカインで狂って、警備員に殴り殺されたジャコで、ジャズのリアルな狂気って、博物館送りになったと思うのだけど、それを21世紀の今、エジプトのミイラ男のように復活させると、あんな舞台回しになるんだ、ってことで妙に納得したバディ・リッチ的な音世界の2時間弱だった(バディ・リッチ的音世界って、CD1枚以上聴いたことがない。新記録の夜)。

追記:あのドラムの音と同じくらいのスピード感の映画で、観客はぐったり。館内が明るくなるまで、誰も席を立たない(立てない)、そんなインパクトのある映画だったのは確か。