K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

杉本喜代志: Babylonia Wind (1972) 熱い1970年代の音

 針を落とした瞬間、熱い1970年代の音、だと思い、深夜なのだけどニヤッとした。テナーのブロウが響く。集合住宅なので階下、が気になって少しだけ、音を絞る午前1時。

 最近になってHMVが再発したレコードを入手。杉本喜代志は好きなギター奏者。日野皓正とのデュオでのAlone Alone Alone、ベルリンでのライヴ盤がとても印象深い。その彼の入手が難しいレコード(実は店頭で見たことがない)が再発されたので入手した。実は中身を全く確認しないで注文し、聴いて、ジャケットを見てびっくり。これは「当たり」が決まったような盤じゃないか。

 メンバーを見ると(購入時点では確認していなかった)、好きなテナー奏者・植松孝夫が入っているし、ドラムの躍動感がいいなあと思ったら日野元彦(このあいだの、日野のもっきりやのライヴでしみじみ元彦さんの話をされていましたね)。悪い筈がない。ベースは池田芳夫なので、当時の日野皓正バンドから日野皓正を抜いて、ピアノの市川秀男を足した編成。悪い訳ないよね。

 1970年代のジャズが好物であり、また当時の日本のジャズも好きなので、針を落とした瞬間のテナーのブロウで痺れてしまった。全体的にジャズ・ロックと云われた音楽と括れるが、メンバーのソロは辛口で、いわゆるpost Freeの時代の魅力に溢れている。Fender Rhodesの音がチック・コリア風(RTFになったり、フルモアのマイルスになったり)だったり、打楽器がパスコアール風だったりするのは、時代のブックマークということで、ご愛敬。曲のタイトルを見ていると、教科書のオリエント史のおさらいのようだけど、そのような民族音楽色は一切ない。

 杉本喜代志のギターはジャズ的な曲よりも、ジャズ・ロック的な曲で奔放に弾いたほうが魅力的だなあ、と思う。ジャズ・ビートでの訥々感が正直なところやや物足りない。曲の感じでは、マルティーノのようじゃないと、とか思ってしまう瞬間がある。それでもECM初期のリピダルのギターが、ロック色を出すと古色蒼然としてしまうことと比べたら、まあいいんじゃないかなあ、と思っている。熱かった時代のジャズを聴くことができる。

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杉本喜代志: Babylonia Wind (1972, 日本コロンビア)
A1. Babylonia Wind
A2. Mrs Darius
B1. Rosetta Stone
B2. Colsabard Hill
B3. Hieroglyph
杉本喜代志(g),植松孝夫(ts),市川秀男(p),池田芳夫(b),日野元彦(ds)