K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

(ECM1058) Steve Kuhn: Ecstasy (1974) ピアノ職人の技

 ECMの実りある1974年の録音も終盤になってきた。前作のTranceと同時期の録音。ただし、Tranceは米国録音、こちらはオスロ。やはり、音はこちらのほうが遙かに美しい。

 アルバムのタイトルが Ecstasy。前作のTranceといい、日本の某レーベルのエロ・ジャケットのように狙っている。そして、狙い通りのような音に仕上がっている。うまいし、聴かせる。ピアノ職人の技、が光っている。凄いなあ。

 キューンって、ピアノが本当にうまい。曲作りもうまい。ある種のECM的な印象、natural、とは距離があるのだけど、技でECMらしさを作ってしまうところは本当に凄いと思う。バイラークとの違い、はソコかなあと思う。

 今までTranceばかり聴いてきたのだけど、改めてしっかり Ecstasyを聴くととても良い。ときどきキメ技を連打するケレン味が気になるが、それも持ち味。ふっと力を抜いたときに、弛緩した雰囲気のなか溢れ出るような旋律に心惹かれた。ECMらしい録音空間のなかで、漂う。

 ピアノも様々ま音を出しているし、曲も一本調子ではなく、メリハリもある。芸能としてのジャズを演奏しながら、その範疇でこなすECM、って感じかなあ。ただ、感情の基層まで降りていくようなmagicalな何か、が決定的に欠けているところが、キューンであり、いやキューンの良さじゃないかなあ、と思っている。キース・ジャレットは一人でいいからね。

参考記事:

jazz.txt-nifty.com

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[ECM1058] Steve Kuhn: Ecstasy (1974)
A1. Silver (Steve Kuhn) 8:49
A2. Prelude In G (Steve Kuhn) 4:26
A3. Ulla (Steve Kuhn) 7:23
B1. Thoughts Of A Gentleman - The Saga Of Harrison Crabfeathers (Steve Kuhn) 12:16
B2. Life's Backward Glance (Steve Kuhn) 4:45
Steve Kuhn(p)
Design [Cover Design]: Maja Weber
Engineer: Jan Erik Kongshaug
Layout: Dieter Bonhorst
Photograph: Odd Geir Saether
Producer: Manfred Eicher
Released:1975
Recorded November, 1974 at Arne Bendiksen Studio, Oslo