K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

(ECM1051) The Gary Burton Quintet with Eberhard Weber : Ring (1974) 知っているECMの空気の中へ

 1974年の7月後半、西独での録音。 キース、ガルバレクと2枚吹き込んだ後、6月から7月にかけて米国で3枚、そして西独。巷では、ハンコックやマイルスのファンクが唸りを上げていた頃。そんななかで吹き込まれた、このアルバムが缶詰のように保っている空気は、ボクが知っている世界そのもの。ふっと、知っているECMの空気の中へ、吸い込まれるような気がした。

 ここまで50枚のアルバムを聴いて、それなりに振幅が大きな音をファイリングしているのだけど、その中心の空気、のようなものが固まってきた時期なのだろうなと思う。

 ゲイリー・バートンは少し苦手で、ジャズ・ロックやフォーク的な音のときに荒っぽく感じて、ジャズを聴く耳にはしんどいときがある。ECM以前のRCAやAtlanticのアルバムにそれを感じる。コリエルとのダスターは大好きなんだけど。その意味でキースと同じく、アイヒャーのプロデュースがとてもプラスになっている人だと思う。アルバムや音の同質化、というペナルティーがあっても。

 このアルバムはとくに、ヴェーバーとの組み合わせがとても効果をあげていて、二人の音が1+1>>2。そして仕上がりが典型的なECMの音世界。素晴らしい。そしてバートン、ヴェーバー、メセニーと揃ったこのアルバム(特に最後のトラック)を聴いていると、今年のヴェーバーへのオマージュ(まだアップしてなかった!)と、一直線に連なることを強く感じる。40年間変わらない、という意味ではない。彼らは、1974年に21世紀に連なる音を創っていた、ということ。様々なビートを一つの音世界に包み込む、ECMそのものの魅力を強く感じたアルバム。

 この音楽も所謂クロスオーヴァーであり、その後フュージョンと呼ばれる類いのものだけど、彼らが何と何をクロスオーヴァーさせたのか。それは米国と欧州の異なる美意識をクロスオーヴァーさせたのであり、1974年前半に録音したキース・ジャレットヤン・ガルバレクの組み合わせと同様、バートンとヴェーバーの組み合わせも、ジャズという自由形式の画布のうえに描かれた習作のはじまり、だと思うのだ。

youtu.be

参考記事:

jazz.txt-nifty.com

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[ECM1051] The Gary Burton Quintet with Eberhard Weber : Ring (1974)
A1. Mevlevia (Mick Goodrick) 6:01
A2. Unfinished Sympathy (Mike Gibbs) 3:03
A3. Tunnel Of Love (Mike Gibbs) 5:30
A4. Intrude (Mike Gibbs) 4:47
B1. Silent Spring (Carla Bley) 10:37
B2. The Colours Of Chloë (Eberhard Weber) 7:12
Gary Burton(vib), Mick Goodrick (g on A1 to A3, B1, B2), Pat Metheny(g), Eberhard Weber (b on A1 to A3, B1, B2), Steve Swallow(b), Bob Moses(perc)
Layout: Frieder Grindler
Photograph: Tadayuki Naito
Engineer: Martin Wieland
Producer: Manfred Eicher
Released: 1974
Recorded July 23-24 1974 at Studio Bauer, Ludwigsburg.