忙しい日々が続くと、夕方には気持ちがザラついてくる。最近は夜中まで仕事場に居る。
なんか意味もなく胸騒ぎのような感触が沸いてくると、困ってしまうので、仕事場の掃除を延々している。次第に片付いてくると、そんなザラツキも少しは減ってくる、のだけど。珈琲をいれても、効果的かもしれない。
そんな時、音も総動員して、気持ちが楽になるような音を探す。そんな時にいつも候補にあがってくるのは、渋谷毅の音。だけど、一見、優しげに聴こえる彼の音が効果的かというと、そうでもない。包み込むような音のなかにいると、結構、厭世気分に浸り、逆効果なのだ。何かしら、感情に降りていくような強靱な回廊が作られるようなのだ。
このアルバムはピアノ、ギター、ドラムのトリオ。ドラムは上手くアクセントを付けるような(ジョアン・ジルベルトの邦題:三月の水でのパーカッションのような)感じ。だから、ピアノとギターの会話が主体。渋谷毅のデュオ(あるいは、それに準じた)アルバムは、渋谷毅の世界そのもの。ジャズともポップスともつかない強い叙情性のもとで、紡ぐような音が流れていく。気を許すと、かなり感情の奥まで入ってくる。だから、本当はテキトーに聴けるように、奏者と同じようにアルコール片手で聴くべき、なんだと、いつも思う。
今回のアルバムでは、冒頭の曲を聴いていて、怖いなあ、と思った。ふっと出る抑制された音に不思議な煌めき、を感じるのだ。そして、それが得体の知れない若さ、のようなものを主張している。あの酒を置いてピアノを弾く、彼の姿と被らない、ように思えた。いつも、そんな不思議な感覚を呼び覚まされる、ような気がする。
過去記事:
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渋谷毅, 市野元彦, 外山明: Childhood (Carco, 2015)
1. Childhood(市野元彦)
2. No Restrictions for Plasterer(市野元彦)
3. Short Piece for a Day(市野元彦)
4. Falling Grace(Steve Swallow)
5. Subconscious-Lee(Lee Konitz)
6. Hiking(市野元彦)
7. Folk Song(市野元彦)
渋谷毅(p), 市野元彦(g), 外山明 (ds)
Producer: 渋谷毅
Engineer: 島田正明
録音:2015年8月25, 26, 27日 アケタの店
付録CDR: I'm so lonesome I could cry(Hank Williams)