K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

(ECM1083) Terje Rypdal: After The Rain (1976) 「あの奇妙な味」の世界を静謐に語り続ける

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 最近、強く思うことは、ジャズがジャズであるその大切な要因は、「奇妙な・違和感のある味」を感じさせることではないだろうか。決して即興とか、グルーヴでも、スウィングではない。フリー・ジャズも口当たり良く、スムースになったハード・バップへのアンチ・テーゼであって、決してその様式の破壊が本質ではないだろうし。

 だからモンクやドルフィーのように、スタイル的にはバップであろうが、その際だった「奇妙な・違和感のある味」のアヴァンギャルドな風味は、ジャズがジャズである、そのものの主張のように思える。

 で、リピダルのギターはよく泣くギターで、何となく北欧の厳しく冷たい空気を感じさせるのだけど、同時に「奇妙な・違和感のある味」を強く感じさせる面もあって、なかなか聴き飽きしない。

 このアルバムは殆どが彼のソロ。多重録音で幾つかの楽器を重ねている。曲によってはタウナーのようなアコウスティックな一面を見せるが、全般的には「あの奇妙な味」の世界を静謐に語り続けるのだ。同時に、彼の音楽に内包する美しさに、従来以上に焦点を当てているようで、その思わぬギャップを楽しむことができるアルバムになっている。

  それにしても、最後の曲(Like A Child, Like A Song)はマイ・ファニー・ヴァレンタインのように聴こえたりするが、どうなんだろう。元祖的な浮遊感たっぷりのギターで、いい味を出している。ごちそうさま。



 

After the Rain

After the Rain

 

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(ECM1083) Terje Rypdal: After The Rain (1976)
A1. Autumn Breeze(Terje Rypdal) 4:38
A2. Air(Terje Rypdal) 4:25
A3. Now And Then(Terje Rypdal) 2:50
A4. Wind(Terje Rypdal) 1:22
A5. After The Rain(Terje Rypdal) 6:05
B1. Kjare Maren(Terje Rypdal) 4:10
B2. Little Bell(Terje Rypdal) 1:37
B3. Vintage Year(Terje Rypdal) 3:47
B4. Multer(Terje Rypdal) 2:52
B5. Like A Child, Like A Song(Terje Rypdal) 6:00
Terje Rypdal (g, p, ss, fl, bells), Inger Lise Rypdal(vo)
Layout: Dieter Bonhorst
Photograph: Giuseppe Pino
Cover photograph: Franco Fontana
Engineer: Jan Erik Kongshaug
Producer: Manfred Eicher
Recorded August 1976 at Talent Studios, Oslo
Released: 1976

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