K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

両国RRR:今井和雄/the seasons ill発売記念 アルバム未使用音源を大音量で聴くイベント

今井和雄の最新作the seasons illが出た後、幾つものサイトで激賞されている。

早速入手して聴いてみたが、凄いと思いながらも、なんかピンとこない部分がある。実は先日書いたとおり、improvised music寄りのギターに快感を感じるような脳内回廊ができていない、感覚があるのだ。

それは生で、そのようなギター演奏を見ていない、ということも大いに関係している、と思う。音から奏者の身体性のようなものを感じる、という一種のコンパイルのような作業には、実際の演奏を見る・聴くということが必要じゃないか、ということが現時点の仮説。昔、山下洋輔近藤等則、トリスタン・ホイジンガー、ICPオーケストラとかを生で聴いたことにより、そのような脳内回廊ができたと思う。随分長い間聴かなかったが、昨年、エヴァン・パーカーを生で聴いて、そのような音を聴く面白みが、蘇った。しかし、このジャンルのギター奏者は生で聴いていない、のだ。

またディレイのようなエフェクタが身体性を削いで、無意味に過剰な音を噴出させている、ような印象もまたある。例外的にディレク・ベイリーがすっと入ってくるのは、(ボクが持っている音源は)過度のエフェクターは入ってない。ギターのボディの強い響き、急峻な速度の変化が生み出す微係数的な強度の強さ、そんなことを味わえるのだ。

今日は本来は別の予定があって東京に来たのだけど、キャンセル。何かイヴェントがあるか探していたら、zuja氏のツイートで、なんと今井和雄氏のイヴェントがあることを知った。いい機会、だと思った。

難聴気味なので、いささか「大音量」に躊躇したのだけど、お茶の水から徒歩圏内なので、両国に出かけた。

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3部構成。

最初は今井和雄のソロ。エフェクターを使っていない、アコウスティックな音。これは素晴らしい。音の速度感、キレに痺れるのだけど、ベイリーのような直線的な感じではなくて、様々な揺らぎを内包させながら、複雑な文様を作っていくような印象。それに楽器を強く響かせるときの音の美しさ。胴を目一杯共鳴させるような、強い強度。

次はアルバムの別テイクを大音量で。ディレイにより、稠密に音が押し込まれ、その音の粒子が揺動している様、が凄い。それでも、やはり過剰な印象が強く、音量も相まって、かなり疲れたのも事実。別テイクよりも、アルバムの曲のほうが音の粒度が細かい、ように思える。

最後は対談。なかなか面白かった。

・音響の変化が自然に展開されたものをcdに収録

・delayを使っているのは、音響、電子音楽をつくるようなもの。

・良い演奏なんて、ほとんどない。

・ノイズをやってる訳じゃない。

・しっかり鳴らすと、よく鳴る。

などなど。

それでも大音量での疲れは酷く、はじめてお会いしたzuja氏ともロクに話をしないで、早々に引き上げた。

刺激的で、だからこそ疲れた午後だった。関係の方々に深謝申し上げます。

The Seasons Ill

The Seasons Ill