K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

梅雨の合間に(犀川から不老坂へ)

北陸に住みはじめて、まもなく10年になる。早いものだ。冬の北陸の陰鬱な光景も慣れてくると愉しい。 墨を流したような淡色のグラデーションは見飽きない。

梅雨時とは云え、前線から遠い北陸は初夏の輝きに満ちている。そんな季節になると、犀奥の山々から沸き上がる暗い雲を眺める冬の日々が懐かしい。初夏を迎えても、やはり犀奥の峰の上に沸き立つ白い夏雲を眺めているのだけど。

今朝は晴れ間が広がったので、歩いて出勤することにした。明るい犀川沿いを歩く。そして上菊橋で対岸に渡る。雪見橋のような山に近づいた感じも、桜橋のような離れた感じもなくて、犀奥の遠望を見るには丁度良い。橋の上で涼しげな風に吹かれるのが嬉しい。

そして橋の袂から一気に寺町台地に上がる不老坂の光景も好きだ。朝は高校生が行き交う。川沿いから大通りまでの暫く静寂に包まれる。確かに古の人が坂を境界線と捉えた感覚、を感じる。不思議な開放感、アジール。そこに冴えない色の紫陽花があった。昔住んだ大船界隈と違って、どうも金沢の紫陽花は土地が合わないのか、鮮やかさに欠けるような気がする。冬に雨が多い分、梅雨が小雨だからか。

そんなことを考えるうちに台地の上に出る。静寂が破れ、ただ暑いだけの時間に引っ張られる。隣町の職場までの距離を思って、少し暑さが増したように思った。

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上菊橋。

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橋の上の光景。犀奥の峰の上に雲が沸き立つ。

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不老坂。

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不老坂を抜けると、ポッカリと空が広がり、静寂が破れる。何か結界を破ったような、感覚がある。