K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

高柳昌行、井野信義、菊地雅章:Live at Jazz inn Lovely 1990 驚くべき音源が

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高柳昌行、井野信義、菊地雅章:Live at Jazz inn Lovely 1990 (NoBusiness Records)
NoBusiness Records NBCD 135
1. Trio III 18:04
2. Duo I (Takayanagi - Ino) 15:21
3. Duo II (Takayanagi - Ino) 11:53
4. Trio I 20:57
5. Trio II 11:10
高柳昌行(g)、井野信義(b)、菊地雅章(p)
Recorded live by SONY TC-DM at jazz inn Lovely, Nagoya, Japan, October 9th, 1990.

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驚くべきディジタル音源(CDとDL)が欧州のNoBusiness Recordsから出された。1990年、高柳がこの世を去る前年、1990年10月に行った名古屋のラブリーでのセッション。菊地雅章との共演。初めて、ではなかろうか。高柳、菊地の共演が音源として出るのは。内田医師のテープより、TBMから出た銀巴里セッションでは2名のcreditはあるが、共演した演奏はない。

このアルバムは、2人に井野信義を加えたトリオが3曲、高柳・井野のデュオが2曲。どのトラックも高柳・井野の緊密な弦の空間に、ピアノが距離を置いて参戦している構図。この高柳・井野のデュオが実に素晴らしい。安易な昂奮のようなものがない、緊密な音の欧州が凝縮された低温の熱いジャズ。セカンド・コンセプトよりはずっとフリージャズ寄りではあるが、根っこのジャズの熱さが吹き出していて、スタイル云々を越えている。そして両名の弦から弾け出される音の美しさ、に時折はっとする。

さて菊地のピアノは手探りのように、疎な音を出し、随分な距離感を保っている。その音の粒立ちが美しい。曲名からみると、このアルバムの曲順は時系列でないと推察されるが、2曲のデュオを挟み、刻々と熱く距離を詰めていく様が圧巻。次第に高柳、井野との応酬が過熱していく。その稠密な音、ジャズのセッションそのものに心奪われる。2曲目のトリオの終盤で次第にピアノの打音に引っ張られていく様子が楽しく、モンクっぽい微妙に外れた音が懐かしいジャズの空気に染めていく。そしてSong for che?のような旋律のギターが美しくはじまり、アルバムのお仕舞いへ流れていく。聴いていて、時間を忘れたなあ。

それにしてもカセットテープ音源でこれだけ聴かせるのが驚き。ピーター・アースキンが保存していたカセットテープのWRのサウンドボード録音なんか、もっとダメだったような気がするが(聴く気がしなかった)。