K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

(ECM1017) Keith Jarrett: Facing You (1971) 素朴なfolk song

Facing You

[ECM 1017] Keith Jarrett: Facing You (1971)
A1. In Front (Keith Jarrett) -10:07
A2. Ritooria (Keith Jarrett) -5:50
A3. Lalene (Keith Jarrett) -8:30
B1. My Lady ; My Child (Keith Jarrett) -7:20
B2. Landscape For Future Earth (Keith Jarrett) -3:30
B3 . Starbright (Keith Jarrett) -5:03
B4. Vapallia (Keith Jarrett) -3:51 うなり声あり!
B5 . Semblence (Keith Jarrett) -3:00
Keith Jarrett(p)
Layout: B. & B. Wojirsch
Photography: Danny Michael
Engineer – Jan Erik Kongshaug
Producer – Manfred Eicher
Recorded November 1971 at the Arne Bendiksen Studio, Oslo.

https://www.ecmrecords.com/catalogue/143038752077/facing-you-keith-jarrett

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[2015-08-18] オリジナル盤の音

 どうもECMの場合でもオリジナル盤と後年のプレスで若干音が違う。チックのA.R.C.やソロで気がついた。後年のプレスはやや硬質な感じで、ピアノの金属的な響きが強くなっているように思える。微妙なのだけど、気になる。明らかに後年のプレスの音は、気に入らないのだ。2月17日の記事で音が気に入らない旨を書いた本盤も気になってきた。そんな訳で、所謂ペラジャケット風の「背タイトルなし」を入手した。(この背タイトルなしは、ECM023までのようだ)

 結論から言うと、ピアノの音が柔らかく、残響感の不足はあるものの耳に優しく、いい音だなあ、と素直に思える。確かに違う。本盤の音を視覚的な印象で云うと「青」だった。キースがまだ若く、その青さがやや攻撃的なタッチで表された、ような印象だ。CDで聴いた印象も同じ。しかし、このレコードではそのような印象が和らいでいる(幾分残っているが)。

 楽しいなあ、と思う、が、やはり困ったことだ。オリジナルで揃えようか、って気になってきた。ECMの1000番台の途中までの話なのだけど。

 ちなみにオリジナル盤ではレーベルの印字が若干違う。Made in Germany,がないのだ。

[2015-2-17記事] 素朴なfolk song

  きっと怒濤のようだった、に違いない1971年。このアルバムもオスロでの録音。当時、マイケル・ヘンダーソンを含むマイルス・バンドの一員(つまりファンク時代に突入)であったキースが吹き込んだはじめてのソロ・ピアノ。ソロ・ピアノ、と書いたのは、vortexでソロ・多重録音(歌もうたう)のFolk song集があるから。そして、はじめてのECM

  何回も書いているのだけど、VortexからAtlanticのキースは、その後の片鱗を十分湛えながらも、溢れた様々なアイデアが子供のおもちゃ箱状態で、アルバムというパッケージで見たときの完成度が低い印象が強い。だから、ECMでのキースの音楽はアイヒャーとの共同の作品、という感覚が強い。先般のハンブルグのように、re-master以外全く関与していないアルバム、であっても、確かにECMとしての強烈なQualityの主張を感じるから。

  このアルバムはその後のimprovisation(と称する)ピアノ・ソロと異なり、彼が作曲した小品を弾いたもの。時間も比較的短い。だから、まとまりも良く、彼のピアノの美しさ、も存分に味わえる。ただしECMらしい残響感はやや抑え気味で、ある意味素直な音が届いている。その意味で、その後のアルバムで感じさせる広大な演奏空間は感じない。むしろ、スタジオで聴いている感じそのもの。それがチックのソロ、よりもやや強い。またその後のソロがimprovisationと称し、trans状態から天上の音を探し求めるような、上向きのvectorが強いのに対し、下向きのvector。地面に脚がついて、自らの血の源流を探し求めるような、肉体的でもあり、白人のsoul、Folk song集となっている。だから、ケルンを聴いてから、これを聴くと、やや期待が外れる。いろいろな意味で。

  ボクがコレを買ったのは35年くらい前。もう随分となる。何回聴き直しても、当時の印象とあまり変わらない。「含み」の少ないアルバムだから、だと思う。だけど、彼のピアニズムの(悪く云うと)虚飾、あるいはケレン味は全くなく、彼の芯のようなものが伝わるアルバムだと思う。この部分から様々な音が旅立ったに違いない、と思う。そのような、また異なった「1971年秋のドキュメンタリー」の名作、だと思うのだ。

 ちなみに、このアルバムの特長は「彼のうなり声がない」、という点にも見いだしていたのだけど(アイヒャーが当初、止めていたのか気になる)、今回、聴き直すとB面4曲目で一カ所、うなっているのを見つけた。集中力がなかなか続かないよね、普通は、ここまで。

 

[追記] ボクの部屋には2つのスピーカセットがあって(昔のJBL、今のタンノイ)、生まれは30年くらい違う。高域の伸びやダイナミックレンジは明らかにタンノイのほうが良い。つまり、昔のアルバムはCDであれ、レコードであれ、JBLが心地よくて、最近のアルバムはタンノイ。ECMについては、現代的な録音であること、クラシック的な室内楽空間であることから、タンノイが丁度。しかし、このアルバムではタンノイの音は攻撃的で辛かった。残響が少なく、ややオフ気味。それでいて直接音のアタックが強い。そんな意味では「ECMの音」の端っこ、から少しコボレテいる感あり。 

 

[2011-02-11記事] 音の流れがスムーズじゃないけど

今日から世間は三連休。ボクは土曜出勤。だからあまり浮かれた気分ではないのだけど、朝起きたら、蒼い空がみえていた。だからあわててスキーに飛び出した。金澤に住んで何が嬉しいって、スキーや登山に思い立ったら出かけられること。その他に何を望もうか?(と書いて、まだまだ他に望みが多いことを想い出した)

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さて本題。ブログでは、ジャズ時々クラシックなのだけど、実生活は(ボクにとっての)新しい音への渇望感から、依然クラシック偏重のキライがある。勿論、30年も付き合ったジャズがキライになるものですか、と言い切りたいトコロなのだけど、グラグラ。

それはさておき、ECMのLP盤を手に取り、なんとなくボクが学生の頃の時間に仄かに戻ったような気持ちになることが楽しい。という訳で、お次はKeith JarrettのFacing you。ボクが聴きはじめた1979年当時、ECMはトリオ・レコードから発売されていて、テープヒス雑音がはっきり付加されるなど、邦盤と独盤の質の違いがクッキリ分かることが寂しかった。ところが、最初期のECMはトリオ・レコードが権利を獲得する前に個別契約になっていて、かのChick Coreaはポリドールから発売されていた。Facing youはドコだったかな?販売数量が少なくて、結局、高価な独盤でしか手に入らなかった。まあ、その方が良かったのだけど。

ケルン・コンサートで痺れてジャズ・ピアノやら、その周辺の音楽を聴きはじめた30年前だったのだけど、その気持ちで聴くと違和感があった。ゴスペルやフォーク的な香りが何となく青臭い感じがしたのだ。だからガッカリして、仕舞い込んだままにしていたレコード。

ここのところECMのLPレコードについて書くことが多いのでこのレコードを思い出した。何年振りだろうな,聴くのは。ターンテーブルにのせて流れ出す音の印象はあまり変わらない。でも曲の匂いは気にならない。むしろ爽やかなナイーヴな印象に好感をもった。どこか既視感のあるような心象風景が音から広がっている。ただ音の流れがあまりスムーズじゃなくて,ごつごつとブレークがかかりながら進行しているような印象があって,十分に気持ち良くなる感じではなかった。それは残念。それにしても音のよさは特筆モノ。ピアノが本当に良く鳴っている。綺麗だなあ。

 

参考記事:

https://jazz.txt-nifty.com/kudojazz/2005/06/facing-youkeith.html

FACING YOU

FACING YOU

 

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ボクのは後年のプレス。ジャケットのLCがついている。 古いの欲しい。