K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

(ECM1027) Dave Holland: Conference of the birds

Conference Of The Birds

[ECM1027]Dave Holland: Conference of the Birds (1972)

A1. Four Winds (David Holland) 6:33
A2. Q & A (David Holland) 8:32
A3. Conference Of The Birds (David Holland) 4:34
B1. Interception (David Holland) 8:21
B2. Now Here (Nowhere) (David Holland) 4:33
B3. See-Saw (David Holland) 6:41
David Holland(b), Anthony Braxton, Sam Rivers(reeds,fl), Barry Altschul(perc)
Design [Cover]: David Holland
Cover art: Pueblo Designs and The Book of Signs
Layout: B & B Wojirsch
Engineer [Rec.]: Tony May
Mixed : Rapp, Wieland
Producer: Manfred Eicher
Released: 1973
Recorded on November 30, 1972 at Allegro Studio, New York City

https://www.ecmrecords.com/catalogue/143038750629/conference-of-the-birds-david-holland-quartet

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[2019-12-28]

1972年録音のECMは面白い。ダイナミックレンジが広く、そして、それぞれ濃淡はあるがレーベルカラーを纏っている。録音技師達とアイヒャーがとおす一本の芯のようなものが見える。

ボク自身、前回書いた2015年から大きく変化したのはフリージャズ、インプロヴァイズドミュージックを結構聴くようになったこと。だから、音響的な面白さに耳が行くようになったように思う。そして、当時のECMの音、を満喫している感覚がある。ホランドのベースの音とアルトシュルの打音の絡みが好みだなあ。

 

[2015-4-14追記] 現代ジャズの起点、鳥たちのさえずりの絶対温度

このアルバムはレコード屋でみて欲しくなったときの感触、のようなことをしっかり覚えている。5年位前のお茶の水。まだレコード蒐集に熱は入っていなかったのだけど、確かに火をつけた一枚に違いない。今聴いても、2011-2-2の記事(下記参照)と全く感想は変わりない。

鳥のさえずりを音楽にした、というとメシアンピアノ曲を思い出す。あれは鳥の鳴き声そのものを音にした、とてもアナーキーな響きを与えるとともに、音楽と音の境界線に立っているような感慨を覚えるもの。ここから先は音でしかない、ような。じゃあ普段、鳥の鳴き声に音楽的なものを感じるのは何故だろう。音の領域から音楽をのぞき込んでいるような、そんな本来非可逆な音楽と音のあいだを、思考がcirculateし続ける。

このアルバムは鳥、を扱っている訳でなく、鳥の会話のようにきこえる何か、それを2本のreedsで表しているのだろう。その語法はFree jazzに根ざしているのだけど、強固なホランドのビート感覚、アルトシュルの軽快なパルスの上で軽やかに舞い上がる管楽器達の会話。このベースとドラムが叩き出す音の世界は、まさに現代ジャズの起点、のような素晴らしいものじゃないかな。昨年聴いたヘルマンのトリオを聴いて、そのリズムに「今この瞬間の音楽なんだな」と思ったのだけど、既にこのアルバムでの細動に、その源を感じた。やはりECMが現代ジャズの起点の一つ、なんだなあと改めて思った次第。

さて、このアルバムは1972年11月30日で、カウエルのECM2026の一日後のニューヨーク。なのに、何故もこんなに録音の質が全く違うのか、不思議に思った。まさにECMの音世界の快感が、Free jazz的音をも従わせるような素晴らしさ。creditを見るとスタディオと録音技師が違う。RTFと同じTony Mayが技師。なるほど。何故、こんな面倒なアレンジをアイヒャーがしたのか分からないけど、その違いが明暗を分けている、のは確かだと思う。


[2011-2-2の記事]

なんだかECMレビューみたいになっているのだけど,やっぱり音空間の情報量が多くて,聴き出すと止められないのだ。それにしても40年近く前の音、万博の後、高度経済成長から石油ショックにシフトした頃、なのだよね。全く信じられなくて、今、の音が響いている。古典になりそうにない。

この「鳥たちの会合」(昔の邦題:鳩首会議)は、ジャケット裏のHolland自身の述懐によると、夜明けのロンドンのアパートの窓 から見えた光景。鳥たちが一羽ずつ集まり、さえずりはじめた様子。そんな音楽をやりたかった、と。だから所謂Free Jazzであり、Improvised Musicとも云える内容。じゃあ、1972年時点である種の様式となっている「反様式」を目指して奏でられる音をECMはどのように捉えているのだろう か。Eicherの音,になっているのか?なっているのだ。どのように?

Dave Holland(b),Anthony Braxton(reeds, fl), Barry Altschul (perc)は、Chick CoreaのFree JazzバンドCircle(ボクはダメ)のメンバー。CoreaがReturn To Foreverへシフトした後、残りのメンバーにSam Rivers(Miles in Tokyoのテナー)を足した形。Circleでの頭でっかちな、観念の先走り、のような音楽、多分にCoreaとBraxonの悪しき方向の調和、だったのではないか。Braxonの音楽は基本的に同じ理由で受け付けないのだけど、例外的に同じ時期のTownhall concert(1972,Trio)でのBraxonはとてもいい(ベースは同じHolland)。アルトサックスのトーンが美しく、抑えられた情念が低い温度で重ねられていく。そして沸騰点まで上昇していく。その音世界、に近いのだけど、Altschulのパーカッション・ドラムの味が良き意味での「軽さ」を与えている。そして、決して沸騰点まであがらない。Riversの参加が骨太な感じを与えていて、観念的なImprovised musicとは一線を画している。

確かに、このアルバムを聴くと確かにECMらしさを感じてしまう。基本はFree Jazzの語法なのだけど、何故だろうか。一つには物理的な意味での音世界の造り。楽器と楽器の距離感、決して近すぎないで適当な距離感を保っているのだ。それが感覚的な音世界とつながっていて、激さない会話、のような音楽を成立させている。鳥たち、そのさえずりの絶対温度はとても低いのだ。決して冷ややかではないのだけど、鳥たちのように会話を楽しむ、ときとして挨拶のように跳ねる、音楽。

Free Jazzが苦手なヒトが楽しめるか保証の限りではないのだけど、ECMにFree Jazzの入口(クレパスかもしれない)が開いていることを知っておくことも悪くない。

Conference of the Birds

Conference of the Birds

  • アーティスト:Dave Holland
  • 出版社/メーカー: Ecm Records
  • 発売日: 1994/06/14
  • メディア: CD
 

 

 工藤さんのブログ:

https://jazz.txt-nifty.com/kudojazz/2005/07/conference-of-t.html

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