K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

雪の朝、もレコードを聴いている (Keith Jarrett: Life between the exit signs)


かなり苦しい、子供の頃の疼くような記憶と向き合うような数日を過ごし、金沢に帰ってきた。雪が降りはじめた。

雪が降ると、その夜は暖かく、明るい。

朝が来て、ボクは再びレコードを聴いている。Keith Jarrettのデビューアルバム"Life between the exit signs"(Vortex original press)。1967年の録音。彼が22才の頃。未消化の美しい・難しいモチーフがテーブルに投げ出されていた。共演もCharlie HadenPaul Motianも、この世を去った。

半世紀近い時間を知らない音溝から流れる音は新しく、才気だけが先走る瞬間を捉えている。そして数年後、カルテットに発展する前の、このトリオのライヴ"In Hamburg"に昇華する。

オーネットやアイラーなどのFree Jazzと呼ばれる奏者達は、破壊が最終到達点と捉えていたのではなく、与えられた音の構造のなかでの演奏の枠から抜け出して、新たな音の構造への脱出を試みた、ように感じる。その一つの形として破壊的な表現もあったのだろう。従来の音の構造を脱構築し、音の可能性を広げたようにきこえる。

メシアンピアノ曲だって、美しさの追求という面で一貫していて、あの「鳥」の曲も、音としてはとても美しい。従来の調性の外へ、さらなる美を求め彷徨しているような甘美な世界。だから破壊という側面を誇張したような高橋悠治の演奏はしんどかったなあ。

そのようなコールマンらの試みを美しく捉え直したのが、キース・ジャレットであり、デビューから1970年代末までの彼の録音を聴くと、その軌跡が時には迷走しつつも、幾つかの録音で結実していると思う。美しいFree Jazzの末裔、であると思う。そして現代音楽とも止揚したような音、を時としてボク達に聴かせてくれている。

そんなことを考えている雪の朝。積もり続けている。