K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

(ECM2338) Aaron Parks: Arborescence (2011) 季節の変曲点

  季節の変曲点のような時がある。季節の微係数のようなものが正から負に変わる瞬間、のような。夏から秋に遷移していくなかで、秋が強まる、正の微係数の時期。その増勢がゆっくりと衰え、ほぼ一定になる頃合い。まさに今朝、眼が覚めたとき、東に浮かぶ淡い光をみたときに、そのように感じた。

 来客や登山で、気分を高揚させていた先週半ばから週末の反動で、気持ちを繋ぎ止める紐のようなものが切れた軽い喪失感を感じている日々だからか、抑制的な音がよく染みるような気がする。自室でゆっくりする時間もなく、寝に帰るような日々なので、レコード聴きはお休み。仕事場にある、昔のBoseのステレオセットでディジタル音源を聴いている。

 Aaronという名前は、そのディジタル音源を管理するiTunesで真っ先に飛び出してくるので、何となく聴くことが多い。だけど、このECMのソロが気分に合うことはあまりなくて、むしろinvisible cinemaなんかを聴いたりする。ジョウシャのバンドでちょっと気になってきた奏者だからね。

 今日は曖昧な空模様で、季節の変曲点、のような感じ。そんな時に聴くと、気持ちにはまり込んだような気がする。キース・ジャレットの一連のソロのような美音、それも弱音での美しさは際立っている。それでいて、感情の高揚、のようなものは感じさせず、クラシックの現代曲のような静けさ、が心地よい。それでいて、ジャズの奏者である柔らかさを感じさせる。ジャズと現代音楽の境界よりは、向こう側、のような気がするが、ならば、その作曲能力には瞠目させるものがある、のではないか。improvisation至上からの解放、のような伸びやかな音の世界に愉しむ感覚って、まさに21世紀のジャズ周縁の思潮なんだろうな、って思う。

 録音もECMらしい残響と奥行きを持っている。またあれか、という印象も無くはないのだけど、それが気持ちよい日、もあるのだ。

 話には聴いていたが、近年のアイヒャーのプロデュースじゃないアルバム、ってはじめて認識したことも付記。

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[ECM 2338] Aaron Parks: Arborescence (2011)
1. Asleep In The Forest 4:16
2. Toward Awakening 6:16
3. Past Presence 4:28
4. Elsewhere 7:04
5. In Pursuit 5:32
6. Squirrels 2:21
7. Branchings 5:08
8. River Ways 3:06
9. A Curious Bloom 3:24
10. Reverie 4:17
11. Homestead 3:59
All music composed by Aaron Parks
Aaron Parks (p)
Design: Sascha Kleis
Engineer: Rick Kwan
Photograph (Cover Photo): Kleis, Wunsch
Photograph (Liner Photos) : Sun Chung
Producer: Sun Chung
Recorded at Mechanics Hall, Worcester, MA on November 2011
Mixed at Avatar Studios